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 印刷 2020年05月26日デイリー版1面

船員交代 航行安全と感染のジレンマ】比国の封鎖動向注視。船員労使、雇用期間を延長

フィリピンのロックダウンの動向が注目される
フィリピンのロックダウンの動向が注目される

 世界最大の船員供給国フィリピン。3月半ば以降、期限延長を繰り返し、今もなおロックダウン(都市封鎖)のさなかにある。現時点の期限は5月末。

 封鎖の中心地は、首都マニラや空の玄関口ニノイ・アキノ国際空港が所在するルソン島。封鎖により他の島とのアクセスが寸断され、ルソン島以外の島の船員が同島に移動できない状況が続いている。

 ルソン島在住の船員も同島内のフィリピン海事産業庁(MARINA)など船員ライセンスの発行を担う行政機関の機能が停滞し、乗船に必要な手続きに支障が生じている。

 航空会社のマニラへの就航便数も減少しており、フライトの手配も難しく、そもそも国外に出にくい状況にもなっている。

 ロックダウンに付随するこれらの事象により、フィリピン人船員の国外での船員交代や船舶の引き渡しが難航する事態が続いている。

 帰国する船員もロックダウンの影響でルソン島で足止めとなり、他の島出身船員の故郷への円滑な移送が課題となっている。

■獲得競争懸念の声も

 新型コロナウイルスの感染拡大を端緒に船員交代が見送られ続け、1年以上などの長期乗船者も出始めている。

 運航継続の観点から、交代需要は日増しに高まっており、交代要員の確保が急務になっている。

 そのため、ロックダウン解除を境に、フィリピン人船員を対象とした船員の獲得競争の発生を懸念する声もある。

 フィリピンは世界最大の船員供給国。日本商船隊への配乗で7割超を占め、他の船員国と比べ突出して多い。かつては、バルカーへの配乗が中心だったが、近年はLNG(液化天然ガス)船などでも船長、機関長を輩出している。交代需要が高まる中で、真っ先に候補に挙がる。

 「特に欧州勢は高給で船員の一本釣りをしてきかねない」。海運関係者はこう警戒する。

 一方で、現地の船員教育機関と長年パートナー関係を持つある船主は、「卒業した船員らの当社へのロイヤルティー(忠誠心)は高く、定着率は9割以上。下船後も繰り返し乗船してくれている」と言明。

 その上で、コロナ禍で交代自体が停滞していることは認めつつも「他社の船に行く『船員離れ』は起こらないだろう」と自信を見せる。

 現地で商船大を運営する邦船大手関係者も同様の見解を示す。

 船舶管理関係者は「ここ10年ほどの間、各社はフィリピンをはじめ船員の囲い込みをうまくやってきた印象がある。取り合いが起こるにしても局所的な動きにとどまるのではないか」と指摘する。

 全面的なロックダウン解除となれば、ルソン島以外の船員の手配にも道が開かれる。

 交代需要が高まる中で、船主らによる船員の取り合いが起こる可能性もあるが、それを打ち消す意見も多い。

 フィリピンのロックダウン解除の動向が注視される。

■IMO工程表に対応

 他方、国際船員労使が円滑な船員交代に向け奔走している。

 国際船員労務協会などが加盟するJNG(使用者側団体交渉団)と労働側のITF(国際運輸労連)は、これまでに2度にわたり船員雇用期間の延長で合意した。

 両者が定めるIBF協約では乗船期間が原則10カ月までとなっている。

 だが、感染拡大を端緒に船員交代が難航する中、両者は既存の雇用契約を3月17日から4月16日まで延長した。

 その後も各国による移動制限が継続したことから、さらに5月15日まで延ばした。

 この措置により、期間中に雇用契約が満了し、交代ができない場合も雇用契約延長が可能となった。

 また、IMOが5月5日に定めた船員交代を円滑に実施するためのロードマップ(工程表)案を踏まえ、JNGとITFは、6月15日までを移行期間とし、同案への対応も図っている。

 同期間中、船員交代に向けて、運航事業者らに対して経営上可能であれば雇用期間を超えて就労している全ての船員に金銭を支払うことや、船員交代が開始された場合には、職位に関係なく、乗船期間の長い船員から優先して本国送還すること-などを両団体で合意した。

 交代需要が高まる中で、国際船員労使の取り組みも引き続き注目される。

(随時掲載)