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 印刷 2020年05月25日デイリー版2面

国内船主の今】(217):PIL用船料95%減額の衝撃。BBC船を取り戻せ

 20日夕、西日本に拠点を置く日本船主が電話取材に答えた。

 「BBC(裸用船)の用船料減額は債務不履行(デフォルト)と同じではないのか」

 PILは複数の日本船主に6月以降、BBC契約料を95%減額すると通知。従来の海運業界の常識は簡単に覆されつつある。

■コロナが理由か

 地銀関係者が話す。

 「新型コロナウイルスを理由に用船料の減額を打診してくる海外オペレーター(運航船社)は、もはやエクセルで管理しなければならないほど多い。その大半が『どさくさ紛れ』と見ている」(船舶融資担当者)

 地銀関係者の言う「どさくさ紛れ」とは、新型コロナ禍の影響があったにせよ、いずれ減額要請をする海外オペのことである。

 実際、シンガポール船社PIL、スイス船社ギアバルク・ホールディングスは新型コロナが顕在化する前から経営不振がうわさされたり、用船料の減額が実施されていた。

 前述の地銀関係者が話す。

 「地銀としては海外オペの用船料の減額には応じるしかないという見方も出ている。減額に応じずに海外オペに倒産されれば、そのダメージの方が大きいというのが理由の一つだ」

 しかし、果たしてそれでいいのか。

 過去、三光汽船、第一中央汽船など邦船オペが用船料を支払えなくなった際にも同様の議論が起こった。

 海運OBが述懐する。

 「三光など過去の邦船オペの例をみても、定期用船への依存度が過度に高いオペの経営が回復する可能性は低い。逆に延命することでその間の用船料債務が雪だるま式に増え、株主資本が毀損(きそん)される。経営危機のオペの延命に協力することは、かえって赤字を増やす結果につながりやすい」(海運大手OB)

 減額に応じて延命か、断固拒否か。

 足元で焦点となっているのは、むしろ本船をどう取り戻すか、という点に移りつつある。

■延命策はムダ

 「BBCから定期用船契約に切り替えられないか検討している」

 西日本に拠点を置く船主が電話取材で話した。償却資産として安全とされてきたBBC契約だが、肝心のチャータラー(用船者)自身の信用不安が発生したことで、本船を無事に取り戻せるかどうか気が気でない。

 海運ブローカーが話す。

 「BBC用船料の支払いにさえ困る海外オペなら、船舶管理についてもずさんな可能性がある。そうなると、定期用船契約に切り替えるといっても、海外オペの協力が必要なだけに一筋縄でいかない懸念がある」

 実際、BBC船は海外オペの船舶管理で運航されている以上、仮に当該海外オペが倒産した場合、本船を船主がどう取り戻すかは、難しい課題の一つだ。

 1990年代にBBC船を海外オペの倒産から取り戻した経験を持つ商社関係者が話す。

 「BBC船主は本船の所有権を持っているといっても書類上のこと。実際にはBBC船に乗船中の船員の給与やバンカー(燃料油)代が未払いならば、業者が先取り特権を主張する。私の経験したケースでは船員自体が給料をもらえるまで下船しないと騒がれた。こうした費用が数千万円かかることもある」(船舶部)

 しかもBBC船が日本近海にあるとは限らない。米国や欧州、シンガポールの港湾で当局裁判所の命令で拘束されてしまえば、船主自身がそこまで引き取りにいくしかない。

 BBC契約を締結中の日本船主が憤る。

 「仮に本船を取り戻す際、余計な請求書など一切出てこないように仲介した商社にきつく要求している。実際、用船料の減額を要求している海外オペの本社の役員、社員はそこまで給与カットし財産処分しているのか。それをちゃんと確かめないで安易な減額に応じる気はない」(西日本に拠点を置く船主)

 海外オペの用船料の減額問題。いつか来た道が再び目の前に広がっている。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載