印刷 2020年05月11日デイリー版1面

インタビュー ドライ船社の針路】旭海運社長・根元聡氏。インダストリアルキャリア極める

旭海運社長 根元聡氏
旭海運社長 根元聡氏

 2020年度から4カ年の新中期経営計画「あさひいちがん」をスタートさせた旭海運。新中計ではインダストリアルキャリアを極め、安定的に黒字を確保することなどをテーマに掲げた。根元聡社長に新中計の概要とそこに込めた思いなどを聞いた。

(聞き手 山田智史)

■3事業三位一体

 --新中計「あさひいちがん」の基本方針は。

 「われわれはドライバルク船に特化している。ドライ専業ではあるが、オペレーター(運航会社)業、船主業、船舶管理業という海運会社の核となる事業は全て自前で営んでいる。今後も3つの事業を三位一体で運営していく方針は堅持する」

 「その上で、『インダストリアルキャリアを極める』『安全運航を極める』『安定的に黒字を確保する』という3つのテーマを掲げた。重要なことは平凡に見えても行うは難しだ。基本に戻り忠実であることがわれわれの生きる道だと考える」

 「“インダストリアルキャリア”という言葉は昔から使われているが、社員一人一人で解釈の仕方が違う。改めて“インダストリアルキャリア”の要件や目指すイメージを明確にして、甘えなく具現化にまい進する。当社はこれまで、幸い大きな海難事故は起こしていない。だが、海運会社にとって安全運航は永遠の課題だ」

 「当社は過去十数年間で、経常赤字に陥ったのは2回しかない。だが、今後も黒字を確保できる保証はどこにもない。神戸製鋼所や日本郵船といった心強いステークホルダーはいるが、常に手助けを得られるわけではない。健全な危機意識を持たなければならない」

 --3つのテーマを実現するための取り組みは。

 「将来のありたい姿を実現するために、全社的なものと部門ごとの2つのパートに分けてそれぞれ課題を抽出した。全社的な課題は、『結び付く』『育てる』『近代化』の3つ。それぞれの課題に対し委員会を設置し、活動を始めたところだ」

 「当社は50人程度の小所帯だが、縦割りで横のつながりが希薄なため、結び付きが弱いように感じる。ラグビーでいうところのSame Picture(ピッチにいる全員が同じ絵を見ること)の局面を多くつくりたい。また定期採用が難しいため、仕事が属人的になり、人を育てる余裕もない。人材育成は優先課題だ。業務の5S(スピード、精度、説明能力、数字、システム)も近代化しなければ、事業環境の目まぐるしい変化にはついていけない」

 「会社の土台となる基礎の部分がしっかりしていなければ、高い利益目標や船隊の拡大目標を掲げても絵に描いた餅になる。組織としての足腰を鍛え、多少のことでは揺らぐことがない基盤を整えなければ、企業としての持続的な成長は望めない」

■ESGにも注力

 --営業、船舶管理、コーポレートの各部門の課題は。

 「営業部門の目標は収益力向上に尽きる。船舶管理部門は安全運航管理品質に磨きをかけて、顧客満足度を高めることだ。環境規制強化を背景に、LNG(液化天然ガス)燃料が普及しつつある。環境に配慮した新燃料への対応も課題になる」

 「コーポレート部門は、全社的な3つの課題に対処するために設置した委員会を実効性ある形で運営することが課題になる。その上でESG(環境・社会・ガバナンス)にも力を入れる。環境に優しい燃料や機器の導入に前向きに取り組むとともに、当社らしい地域貢献や社会貢献を検討している」

 --組織力を高めるには、個々人の能力を引き出すことも求められる。

 「19年度から意識改革プロジェクト『アイ・プロジェクト』を推進している。トップダウンの会社のままではなく、ボトムアップとのバランスの取れた会社を目指す取り組みだ。同プロジェクトは新中計にも組み込まれている」

 「『アイ』は『I(=私)』で、社員一人一人に自分を主語に語れるようになってほしいとの思いが込められている。受け身ではなく、主体的に物事を考えて、仕事に臨む姿勢を身に付けてほしい」

 「健全なトップダウンは継続するが、それが行き過ぎると人材が育たない。一朝一夕にはいかないと思うが、4年間のうちにボトムアップの土壌を育みたい」

 --事業の概況は。

 「運航船隊は12隻。社船・共有船7隻、期間用船3隻を軸に、常時2隻程度をスポット用船している。船型はケープサイズからパナマックスまでのバルカーになる。船舶管理船隊は15隻だ。社船・共有船7隻に加えて、日本郵船から8隻の管理業務を受託している。中大型バルカーのほか、30万重量トン級のVLOC(大型鉱石船)の管理も手掛けている」

 「電力会社向けの発電用石炭輸送に関しては、COA(数量輸送契約)やスポットの契約が増えている。顧客層も広がりつつある。それに合わせ、運航船は増やす余地があるだろう。一方で管理船は増やすことが難しい状況にあり、現状の規模を維持していければと考えている」

 ねもと・さとし 85(昭和60)年京大法卒、日本郵船入社。13年人事グループ長、16年製鉄原料グループ長。18年4月旭海運執行役員、同年6月から現職。大阪府出身、58歳。