船員支援キャンペーン第2弾
 印刷 2020年04月28日デイリー版1面

インタビュー 令和のニッポン造船】(2):三和ドック社長・寺西秀太氏。船舶修繕、必要不可欠(その1)

三和ドック社長 寺西秀太氏
三和ドック社長 寺西秀太氏

 平成から令和に時代が変わり、造船業界も国内外で再編の動きが活発化している。転換期を迎えている造船業界は厳しい状況下で、どう生き残るか。高い技術力で船舶修繕を手掛ける三和ドックの寺西秀太社長に聞いた。(聞き手 浅野一歩)

 --三和ドックの概要は。

 「内航・外航船の一般的な修繕事業に加え3Dレーザースキャナーと3D設計を生かしたバラスト水処理装置(BWMS)やSOx(硫黄酸化物)スクラバー(排ガス浄化装置)のエンジニアリング事業を行っている」

 「レトロフィット(既存船の改造)工事はBWMSで約70隻まで実績を積み上げている。手持ち工事量は30隻ほどだ。このうちLNG(液化天然ガス)船が10隻ほどロットで受注している。スクラバーの実績は、当社で搭載した船が5隻、エンジニアリングだけを行ったのが2隻。今後の施工は4隻ほどが確定している」

 「特に内航船の修繕は事業の中核であり、当社の存在意義。航路がある程度固定されており、ドック入りのスケジュールを組みやすいため、安定的な収益につながっている。また、内航船は規格化されておらず、硫黄運搬船やセメント船など多種多様な船があり、難しい荷役装置の修繕などで弊社の技術力を評価いただいている」

■国内回帰の可能性

 --事業環境をどう見るか。

 「国内輸送需要は全体的に減少傾向にあり、外航船のトレードの考え方も多様化している。世界経済の低迷が続いている現状で、荷主企業の構造改革も進み、日本発着の外航船や内航船も非常に大きな変革の時を迎えている。これらの船舶を主なビジネスの対象にしていた日本の船舶修繕業界にも大きな変化がくる」

 「今回のコロナ禍の影響で、BCP(事業継続計画)の観点から邦船社の修繕ヤード選定に関する考え方も変化するだろう。国内回帰の傾向が強まる可能性もあれば、全世界的に分散を加速する可能性もあると思っている。各社さまざまだろう。コロナ禍の影響の全体像についてはっきりとしたことを言える段階にはないと考えるが、大きな影響を残すことは間違いない」

■修繕事業に変化

 --技術の進歩も無視できない。

 「船舶のデジタル化そのものは、修繕ヤードの売り上げが増えることにはつながらない」

 「日本郵船などが進める船のIoT(モノのインターネット)化によって、陸上からネットワークを通じて遠隔でメンテナンスが可能になれば、機関や機器の寿命が延びることにつながる。これまでエンジンは基本的に定期的なメンテナンスを行うことが安定運航の前提だったが、メンテナンス頻度を減らすことになれば船主にとってはコスト削減につながるが、修繕需要そのものは減少していくことになる。また船舶検査のリモート化など、物理的な入渠の頻度を減らすことも可能になるかもしれない」

 「国際海事機関(IMO)が掲げる温室効果ガス(GHG)50%削減に対応した船舶も誕生してくる。LNG燃料など新燃料を燃焼させるエンジンのメンテナンスは、既存のディーゼルエンジンと比べれば頻度もやり方も変わってくるはずだ。今後10年で船の世界は大きく変わる。しかし、船がどのような形になるにしろ、完全なメンテナンスフリーにはならない。島国に絶対必要な海運産業を支える社会インフラとして船舶修繕は必要不可欠な存在だ」

 --どのように生き残っていくのか。

 「上述のような変化は急激に業績に影響してくるような性質のものではない。しかし真綿で首を締めるようにじわじわと効いてくるはずだ。当社のエンジニアリング事業は将来への備えでもあり、今はコンセプトの段階でしかないような船舶が当たり前に航行する世界への過渡期に特に力を発揮する」

 「技術が進歩するスピードは速く、1年や2年で変わっていく。しかし船の寿命は20-30年と非常に長いため、個々の船舶のライフサイクル内で年々厳しくなる環境規制や世界で標準となってくる新技術に追いつけない」

 「新造船全てが環境規制に対応したら、今取り組んでいるBWMSやスクラバーのレトロフィット需要はなくなる。しかし、船舶のIoT化やデジタル化、環境適合に関連する技術の開発が進む中で、既存の船に最新の技術を入れることで長持ちさせ、世界の需要に合わせていく動きは十分に考えられる」

(2面に続く)

 てらにし・しゅうた 10(平成22)年3月東大農学部農業・資源経済学専修卒、商船三井入社。15年4月三和ドック入社、取締役。20年1月から現職。34歳。