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 印刷 2020年02月10日デイリー版2面

国内船主の今】(202):ヤマニシ破綻、地銀に激震。海外オペの用船料遅滞

 2月3日、愛媛県今治市内。駅構内の喫茶店で中手船主が静かに語る。

 「今はまだ用船料の未払いはない。しかし、いつ用船料の減額通知が来てもおかしくない状況だ」(今治船主)

■3つの共通点

 ドライ船の用船料は全船型で1日当たり3000-5000ドル。船員費用さえ賄えない暴落市況では、もはや船の運航を停止した方が良い状況である。

 日本船主が心配するのは自身のことではない。自身の船を貸し出しているオペレーター(運航船主)の経営状況にこそ、最大の関心がある。

 商社関係者が話す。

 「現在の市況下で経営危機に直面しそうなオペは 1.アンチスクラバー(排ガス浄化装置反対派) 2.大型船が主力 3.アセットライト志向-の3点に集約できる。このメッシュにかかる海外オペは既に数社がピックアップされている」(船舶部)

 規制適合油は1トン当たり600ドルを切ったとはいえ、C重油との値差は依然200ドル以上ある。大型船は当然ながら、中型船に比べ投資規模が大きく、用船料負担も重い。さらに自社船を持たない用船志向が強いオペは、自社船の売却という最終手段でリスク回避できない。

 何より最大の誤算は、新型コロナウイルスの発生でドライ市況の回復が当初予想より遅れそうな点だ。

 海運ブローカーが解説する。

 「足元の市況は低過ぎるとも思うが、季節要因もあり織り込み済み。誰もこのマーケットが続くと思っていない。しかし、その回復時期が後ろにずれることで何が発生するか。それはオペの資金ショートだ」(在京海運ブローカー)

 海外オペの中には昨年、日本船主への用船料の減額を撤回、「正常化宣言」を出した船社もいる。仮に用船料の正常化で日本船主に約定用船料としてパナマックスで1日当たり1万3000ドルを支払っているとする。

 海外オペは長期契約が少なく、スポット運航船の場合、足元の市況との逆ザヤは1日当たり1万ドル(約108万円)、1カ月で3000万円、これが3隻あれば同1億円の損失だ。売却資産のないアセットライト型の海外オペにとって、足元のドライ市況の暴落は、もはや運転資金がいつ底を尽いてもおかしくない状況にある。

■ヤマニシ破綻

 「ヤマニシの倒産は対岸の火事か、それとも全ての国内造船に共通する課題か」

 内航船建造のヤマニシ(宮城県、資本金21億円)が1月31日、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。負債総額は約120億円、手持ち工事は内航船1隻。

 同日夕方、商社関係者が電話で問いただしてきた。

 「ヤマニシは会社更生法を申請したというが、正式認可されるのか。管財人がついたとして、造船不況の中でどうやって再建するつもりなのか」(船舶部)

 ヤマニシの経営破綻に続き、主力銀行の七十七銀行がヤマニシへの貸出金など計約75億円の債権について取り立て不能の恐れがあると発表した。

 これは、もはや瀬戸内周辺の地銀にとって見過ごせない話になった。

 地銀関係者が話す。

 「中国、四国、九州の船舶融資を手掛ける地銀はほぼ全行が地元の中小造船所への融資も手掛けている。これまでは日本船主への融資により発注が増加すれば造船所も一息つけた。ヤマニシの経営破綻、債権回収不能は決してひとごとではない」(船舶融資担当者)

 現在、表舞台で再編劇が繰り広げられているのは「大手造船」。日本にはヤマニシに代表される小型バルカー、内航船を手掛ける造船所が幾つもある。

 三菱重工業や三井E&Sグループ、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、今治造船といったビッグネームではなく、むしろ、こうした中小造船の不況こそ地域経済への打撃が大きいという指摘もある。

 中規模造船の関係者が話す。

 「大手造船の地域経済への影響が大きいのは言うまでもない。しかし、われわれ中小造船は助けてくれるパートナーが限られており、一気に経営破綻というケースが想定される」(西日本に拠点を置く造船所)

 地銀の船舶融資にとっても重大な局面を迎えつつある。ただでさえ海外オペの用船料遅延の懸念がある中、造船所の資金繰りも悪化している。

 「そもそも多くの中小造船がここ数年、赤字受注してきた経緯がある。仮に会社更生法で債務カットしても、この赤字受注の体質を見直さなければ、同じことが繰り返される」(地銀関係者)

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載