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 印刷 2020年02月05日デイリー版1面

新型コロナ肺炎でバルク遅延。近海・ハンディ、中国寄港船の検疫強化。一部トレード解約も

 中国で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響がドライバルク貨物などの海上荷動きに波及し始めた。近海貨物船オペレーターは、中国積みのプロジェクト貨物がそろわず出荷の大幅遅延や輸送キャンセルの懸念に直面。ハンディサイズバルカーの中国向け原料輸送では揚げ荷役の港湾作業員不足で一部トレードが解約された模様だ。シンガポールや豪州では中国寄港船の検疫強化も始まっており、このまま感染拡大が続けば、海運市場全体に深刻な影響が避けられない見通しだ。(2面に関連記事)

■大型船に波及も

 「輸送商談がままならず、貨物の予定表は真っ白なままだ」

 近海貨物船オペレーターの関係者はそう語る。

 中国積みプラント貨物や鉄骨などのプロジェクトカーゴは出荷の大幅な遅延が生じている。工場の稼働停止や陸送混乱により、2月初めから3月初めに積み荷役予定だった貨物がそろわず、近海貨物船の沖待ちが発生。「荷主は輸送キャンセル料と滞船料のどちらが安いかをてんびんに掛け始めている」(近海船関係者)という。

 ハンディサイズでは中国での揚げ荷役作業者の不足で原料輸送の一部キャンセルが発生した。ただ、荷主が他の揚げ地への振り替え輸送の調整をつけたことで混乱は避けられたようだ。

 邦船社のケープサイズ担当者によると、中国向け鉄鋼原料輸送には現時点で目立った影響は出ていない。しかし、自動車メーカーなど製造業の稼働停止が長引けば、中国向け原料荷動きへの押し下げ要因となる。

 佳境を迎えていた豪英資源大手BHPビリトン向けLNG(液化天然ガス)焚(だ)きケープサイズ新造商談も、建造ヤード有力候補の中国造船所とのミーティングが困難となり、決着が遅れる見通しが濃厚。金融セミナー大手マリンマネー・アジアが3月3-4日に上海市で開催予定だった船舶金融に関する国際会議も11月への延期が決定した。

■船員交代を中止

 船舶管理面にも新型コロナウイルスの影響が広がっている。

 中国人船員の配乗手配ができずに、新造船の引き渡しに支障が出ているケースが出ているほか、中国での乗組員の交代を中止している船舶管理会社もある。

 中国は主要な船員ソースの一つで、日本の船舶管理会社も中国人船員を配乗している。コロナウイルスの流行を受け中国国内の移動が制限されているため、船員を集められず新造船に配乗できないケースが出ている模様だ。

 船舶管理関係者は「中国に寄港した際の乗組員の乗下船のほか、中国での乗組員の交代も原則中止している」と語る。

 船員の最大の供給ソースであるフィリピンの航空大手は、新型肺炎の流行を受けて中国本土への路線の運休を発表。「(乗組員の交代が)物理的に不可能になっている」(同)

 日本や韓国から技術者を派遣することもできないため、中国寄港時に実施するはずだった点検・補修の予定を変更するケースもあるという。

 海運会社は、中国への寄港船に対する検疫強化の動きが広まるのを警戒している。

 コロナウイルスの流行を防ぐため、シンガポール、米国、アラブ首長国連邦(UAE)、豪州などで中国寄港船への検疫を強化する動きがあるようで、「安定的な輸送サービスを損なうおそれがある」(海運関係者)ためだ。

■問われる緊急時の対応力

 【解説】中国では3日に旧正月休暇が明け、これからコロナウイルスによる経済活動への悪影響が徐々に明らかになってくる。

 例年ならば、ここから日本の鉄鋼各社が3月の決算期末に向けて鋼材輸出を増やすはずだった。しかし足元は市場関係者から「アジア近海で船余りが深刻化するのでは」という不安の声が出ている。

 世界の工場である中国経済のまひ状態は、海運市況に重い懸念材料としてのしかかってくる。海運各社には船員繰りや中国以外の代替トレードなど緊急時の対応力が問われてきそうだ。

(柏井あづみ)