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 印刷 2020年01月29日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】海運スタートアップ、調達額11億ドル。19年、フレックスポート8割

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 海運分野のスタートアップ企業が2019年に調達した資金は11億4000万ドル(約1240億円)に達した。海運コンサルティング企業セティウスがこのほど、調査結果をまとめた。ただし、この金額のうち米フレックスポートがソフトバンク系などから調達した資金が10億ドルを占める。この取引を除けば18年の調達額1億9000万ドルから約24%減少した。フレックスポート案件を除いた調達額は減少したが、1件当たりの調達額平均は18年比18%増の270万ポンド(約3億8400万円)で、1件当たりの資金調達は大型化傾向にある。

 セティウスでは、「多くのシップテック(海運と新技術の融合)起業家がスタートアップスクールを卒業し、よりスケールの大きい世界に身を投じて始めた。過去18カ月で海運・ロジスティクス・貿易分野に特化したベンチャーファンドの数は60%増加しており、20年以降もさらに海運分野での投資が続くだろう」と解説している。また、20年に注目するトレンドとして、API(アプリケーションプログラムインターフェース)技術、AI(人工知能)・RPA(ロボットによる作業自動化)、環境技術を挙げた。

 フレックスポートは輸出入企業向けに船積み・通関業務の効率化サービスを提供する「デジタルフォワーダー」の先駆的企業。昨年、ソフトバンク傘下の投資ファンド、ソフトバンク・ヴィジョン・ファンドが主導する資金調達ラウンドで10憶ドルを調達。ITインフラ強化などに資金を投じている。

 資金調達の手法としては、起業前後の、具体的な収益基盤が確立していない段階での「シード」が55%、事業会社が投資する「ベンチャー」が36%、政府機関など公的資金の援助を受ける「グラント」が9%だった。

 セティウスは海運スタートアップを「貿易促進」「船舶運航」「船舶管理」「港湾運営」の4業態に分類する。フレックスポートの案件を除くと、業態ごとの調達額の割合は、貿易促進39%、船舶運航22%、船舶管理21%、港湾運営18%。

 フレックスポートなどデジタルフォワーダーは貿易促進に分類される。日本ではシッピオ(佐藤孝徳CEO〈最高経営責任者〉)が代表的な存在で、昨年は日本最大の船舶投資ファンドのアンカー・シップ・パートナーズなどから総額10億6000万円の資金調達を行った。

 フレックスポート以外の大型調達では、独デジタルフォワーダーのフレイトハブ(5300万ドル)、IoT(モノのインターネット)技術によりコンテナ動静を可視化するトラクセンス(2400万ドル)、港湾や石化プラント運営の効率化・安全性向上を支援するロンビット(1100万ドル)、航海ルートの最適化など燃費節減ソリューションを提供するノーチラスラブス(1100万ドル)などの案件があった。トラクセンスにはMSC、マースク、CMA-CGMの欧州コンテナ船大手3社に加え、伊藤忠商事も出資している。

■注目集める「マルコペイ」

 セティウスは同調査で、19年に設立されたスタートアップから、日本郵船などが立ち上げた「マルコペイ」を含む5社を注目企業として取り上げた。

 セティウスはマルコペイについて「フィンテックプラットフォーム(PF)構築により、船員は電子通貨で給与の管理・受け取り、支払いが可能になる。これにより船上での現金使用を最小化し、船上の船員が家族により迅速かつ低コストで給与を送ることができるようになる」と評価する。

 その他の注目企業として、コンテナの輸送ルートを最適化し、遅延を防止する「オーシャンオプス」、AIに基づきターミナル内のコンテナの動きを最適化する「イーヤード」、ドローン(小型無人機)で船用品などを供給する「Fドローンズ」、最新の貿易条件インコタームズ2020に対応したPFを通じ、中小企業の貿易リスク・コスト低減を支援する「オープンボーダーズダイレクト」を挙げた。