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 印刷 2020年01月28日デイリー版1面

邦船社、コロナウイルス対策へ。全船種、接触回避など

 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、邦船社の中には感染防止策を検討する動きが見られ始めた。船種を問わず、世界中に就航する運航船の船員らを対象に、新型コロナウイルス感染者との不要な接触を避けることや、計測を伴う健康管理を徹底することなどを想定している。ある邦船関係者は「今後感染が拡大すれば、特定の港での積み込みの制限など、一段上の対策も必要になる」とし、動向を注視している。また、コンテナ輸送では武漢港が先週末から荷役を停止。今後の物流混乱が懸念される。

 「現在、対策を検討しているところ。間もなく、決定し周知されるだろう」

 新型コロナウイルスへの対応策について、27日午前、ある邦船関係者はこう語った。

 その上で、現段階で想定されている対策について、感染者との不要な接触の回避▽計測などの健康管理の徹底▽船舶代理店を通じた検疫情報などの共有-などを挙げた。

 中国へ寄港する運航船だけでなく、全世界で就航する運航船の船員らが対象になるという。検査対象は船種を問わない。

 一方で、感染が一層拡大すれば、特定の港での積み込み制限など、対策のレベルを引き上げる可能性もあるという。

■ドライ市況への影響を危惧

 海運会社のドライバルク船関係者は、新型コロナウイルスの用船マーケットへの影響を危惧している。

 「人やモノの動きが鈍れば景気減速は避けられない。市況回復が遅れる恐れもある」

 中小型バルカーを担当する海運関係者は、ドライ市況の回復を遅らせる要因になり得るとの見方を示した。

 足元のドライ船のスポット用船市況は、ケープサイズからハンディサイズまでいずれの船型も日建て5000-6000ドルを付け損益分岐点を大きく割り込んでいる。

 邦船各社はエクスポージャー(市況変動にさらされる部分)を減らし市況耐性を強化しているが、市況変動の影響は避けられないため収支圧迫要因になる恐れもある。

◇武漢港で荷役停止。コンテナ滞留の恐れ

 生産部品など一般貨物輸送にも影響が広がっている。

 コンテナ船関係者によると、武漢海事局の通達により、武漢港でのコンテナ船着岸・荷役作業が先週末から不可能になっている状態だという。中国船社最大手COSCOや、上海錦江航運、神原汽船など日中航路各社は、武漢向けや武漢経由の新規ブッキング受け付けを休止している。

 武漢港は中国最大の河川コンテナ港。2019年通年では前年比8%増の169万TEUを取り扱っている。外航船が直接寄港することもあるが、上海などハブ港で内航船・バージに接続するケースが多い。

 武漢を省都とする湖北省には、完成車大手など日系製造業が多く進出している。武漢港停止前に武漢に向けて出荷された貨物も多い。武漢港が荷役停止となったことで、同港向けコンテナは接続港のヤード内に留め置かれている。

 武漢向けでスルー(通し)のハウスBL(船荷証券)を発行している日系フォワーダーでは「荷主側の生産活動が停止しているが、輸送責任は依然として残る」として対応に苦慮している。武漢港の荷役が再開しなければ、貨物滞留が長期化。デマレージ(超過保管料)などコスト負担も発生するため、輸送業者はトラック輸送への切り替えなど代替輸送の検討も余儀なくされている。

 ただし、今年の旧正月は25日から始まったため、今週はもともと中国発着荷動きが少ない週だった。航空会社が武漢発着便を休止する中、大手航空フォワーダー担当者は「旧正月明けの体制がどうなるか見通しは不透明だが、現時点でオペレーションに大きな混乱は感じていない」と語る。

 武漢に拠点を置く日系物流企業は駐在員など自社人員の安全確保に動いている。近鉄エクスプレスは武漢支店の営業を一時停止。27日から中国・香港への渡航、同地域からの緊急性の低い出張を禁止する通達を出した。

 旧正月が明ける2月2日以降も新型コロナウイルスの感染が収まらなければ、物流面でも混乱がさらに拡大する可能性が高い。