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 印刷 2019年12月20日デイリー版1面

インタビュー スクラバーのレトロフィット】(上):乾汽船社長・乾康之氏「SOx規制混乱回避」、JMU因島工場長・岡野修覚氏「日本の技術力を証明」(その1)

JMU因島工場長・岡野修覚氏
JMU因島工場長・岡野修覚氏
乾汽船社長・乾康之氏
乾汽船社長・乾康之氏

 ハンディバルカー主力の乾汽船はジャパンマリンユナイテッド(JMU)の因島工場で、既存船へのSOx(硫黄酸化物)スクラバー(排ガス浄化装置)搭載工事を実施した。レトロフィット工事の第1船となる3万7000重量トン型「KEN SHIN」は、20日に完工する予定だ。乾汽船の乾康之社長とJMU因島工場の岡野修覚工場長に、両社にとって初となるスクラバーのレトロフィット工事の狙いや意義を聞いた。今後の保守管理の在り方についても語ってもらった。(聞き手 山田智史)

■既存船8隻に搭載

 --SOxスクラバーは大型船でなければ設置が難しいとされる。「KEN SHIN」に搭載を決めた理由は。

 乾氏「まずは物理的に搭載可能かどうかを検討した。当初は3万7000重量トン級の新造船3隻に採用したフィンランドのバルチラ製を検討したが、サイズ的に難しかった。他メーカーのスクラバーを比較・検討したところ、富士電機製のコンパクトな装置であれば設置できることが分かった」

 「スクラバーの機器類の費用と搭載工事にかかる費用を合わせると相当な投資になる。現行の高硫黄油と硫黄分濃度の低い規制適合油の値差がどうなるかも分からない。そういった中で、船齢なども加味して費用対効果を検証し、既存船8隻に搭載する方針を固めた」

 「今回の船舶用燃料油に対するSOx規制強化の影響は極めて大きい。既存船8隻に搭載することを決めたのは、安定輸送を損なうような混乱を避けるには現行の燃料油が焚(た)けるスクラバーを付けるのが有効な手だてだと考えたからだ」

 --JMUにレトロフィット工事を依頼した理由は。

 乾氏「最近、機器の不具合などで緊急工事が必要になった際、迅速かつ丁寧に対応していただいたということもあるが、レトロフィット工事の1番船は信頼できる日本の造船所にお願いしたかった。スペースに余裕のない小型船なので、工事の進捗(しんちょく)状況も自分たちの目で確認したかった。コストへの挑戦が最大の課題だったが、同じ方向を向き一緒に頑張っていこうとの思いを共有できた」

 --スクラバーのレトロフィット工事を受託したときの所感は。

 岡野氏「中国の修繕ヤードで昨年、約400隻のスクラバーのレトロフィット工事が行われた。今年は1900隻の工事が行われると聞く。中国の修繕ヤードでできることが日本でできないはずがないという思いはあった」

 「日本の修繕ヤードで当たり前にできることを示したかった。船主さんにとってスクラバーのレトロフィット工事は、持ち出しばかりで喜ばしいことではない。われわれもそれで大もうけするつもりはない。船主さんと一緒に苦労していきましょうというスタンスだ」

 「準備段階の3D計測から設計、搭載工事まで、レトロフィット工事全体のサービスを包括的に提供することはできる。だが船主さんがエンジニアリング会社や修繕ドックを別々に選定することを望むのであれば、われわれは与えられた場所でその役割を全うする考えだ」

■自然な仕上がり

 --初めてのスクラバーのレトロフィット工事をどのように評価するか。

 乾氏「前向きに、積極的にチャレンジしてもらった。海外の修繕ヤードに負けないという気概を感じた。われわれの信頼を100%受け止めてもらえたと思う。コストの要求に対しても最初から無理とは言わず、結果として届かなくとも向き合うプロセスは信頼できるものだった」

 岡野氏「当初はもっと不格好になるかと思ったが、スマートで自然な形に仕上がった。外見からではどこに搭載したか分からないと思う。一方で、船内には他の配管と比べて不釣り合いなほど大きな吸水ライン、排水ラインを増設した。限られたスペースの中にうまく収められたと思う」

 --「KEN SHIN」以外に3万4000-3万7000重量トン型バルカー7隻でスクラバーのレトロフィットを計画している。

 乾氏「残り7隻のレトロフィット工事についてもJMUさんにお願いしたいという思いはある。ただコストの壁は相当高い。中国の修繕ヤードと同じコストとは言わなくとも、安心が買えるのであれば一定程度許容できる額があると思う。それを超えないようにいかにコントロールするかがこれからの課題だ」

 岡野氏「SOxスクラバーはまったく新しい技術ではない。昔からある技術を応用したものだ。われわれが入社した昭和50年代に、スクラバーを利用したイナートガス(不活性ガス)発生装置(IGG)のタンカーへのレトロフィット工事を何度も経験した。それらの経験が生かせる部分があった半面、設計と現場とで齟齬(そご)が生じることもあった。今回経験したことを2番船以降に生かしていきたい」

■2面に続く