印刷 2019年11月26日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】コンテナ船社、Eブッキング日本も浸透。効率化、荷主メリット大

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 コンテナ船社の自社サイトやポータルサイトを通じた船腹予約(Eブッキング)が、日本市場でも浸透してきた。日本荷主の物流担当者はこれまで、電話などで船社営業担当者との直接コンタクトを望む傾向があり、欧米などに比べEブッキングの浸透率が低かった。しかし、昨今は荷主側も業務のデジタル化を推進。船社のシステムも改善され、ブッキング番号確定などの処理時間が大幅に短縮されたことで、オンラインでのやりとりに対する抵抗感が薄れてきた。船社も、より付加価値の高いカスタマーサービス提供に注力できるため、効率化による荷主のメリットは大きい。

 日本市場でのEブッキングは、コンテナ船業界最大手マースクが主導してきた。

 2015年に業界初のマニュアルブッキングフィー(MBF)を導入。電話だけでなく、メール、ファックスでのブッキングに対して割増金の適用を開始した。

 17年前後からは、Eチャンネル(自社サイトや海運ポータル)以外のブッキング受け付けを事実上停止。現在はシステム障害時などを除き、Eブッキング率はほぼ100%となっている。今年7月からは、スポット貨物に対して、Eブッキング時に運賃・スペースを確約する新サービス「マースクスポット」の提供も開始した。

 この動きに欧州大手が追随。ハパックロイド(ジャパン)は昨年12月1日付でMBFを導入。Eブッキング率は同月に6割を突破。さらに現在は8割まで改善したという。また、オンライン見積もりシステム「クイッククオート」を昨年8月からグローバルで導入している。

 CMA-CGMではグループのデジタル化の取り組みの中で、16年ごろから「アジアのEブッキング率が低い」という課題が顕在化していた。日本でも同年、MBFを導入。顧客へのプレゼンテーションも積極的に行い、比率向上に取り組んできた。

 日本でのEブッキング率はAPLなどグループ船社を含めて65%前後で、70%台も視野に入ってきたという。「ブッキングの正確性が格段に向上した。過去のブッキング内容をテンプレート化できるなど、荷主にとっても利便性は高い」(CMA-CGMジャパン)

■チャージ無しで6割

 邦船3社の定航事業統合会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)はグローバルで平均9割近いウェブブッキング率を誇るが、地域によって差はあり、日本や日系荷主の多いタイなどでは同比率が低迷していた。

 ONEジャパンでは、Eブッキング率引き上げに、日本全体で過半の貨物を取り扱う関東支店を中心としたタスクフォースを昨年立ち上げ、客先でのプレゼンテーションなど、利用促進を図ってきた。

 この結果、昨年同時期に1割に満たなかったEブッキング率は、現在は6割弱まで上昇した。荷主への働き掛けをさらに徹底し、来春には7割以上に引き上げる考えだ。

 西尾徹取締役常務執行役員関東支店長は「ウェブ化により、荷主にも本来の業務に注力いただける。われわれもカスタマーサービス改善にリソースを集中でき、結果として荷主にさらにメリットをもたらすことができる」と語る。人手のかかるマニュアルブッキングについては、追加チャージ導入の検討も開始する。

■利用盛んな日韓航路

 「高齢の方で、『追加料金を払うから電話で対応してくれ』という荷主もいる」「関東に比べて関西や地方の荷主は『義理人情』を重んじる担当者が多く、大きく(電子化が)遅れている」(船社営業担当者)など、地域・世代で荷主の反応にも差があるのは確かだ。

 しかし、ONEがMBFなしでEブッキング率の一つの壁となる5割を突破したことは、業界に大きなインパクトを与えそうだ。

 また、一般的に遠洋航路より近海航路の方がEブッキングを敬遠する傾向があるが、例外的に利用が盛んなのが日韓航路だ。

 特に業界最大手の高麗海運が11年からEブッキングを開始。同社の日本でのEブッキング率は90%台後半に達する。他の韓国船社が「最大手が道を開いてくれたため、どの荷主にも説明しやすい」というように、その後にEブッキングを開始した船社も、利用率5-7割といった高い比率を達成している。主に釜山港発着のルーチンの船積みが多く、定型化になじみやすかったという見方もある。

■Eコマースが加速

 コンテナ船社のEコマース(電子商取引)対応は、ウェブブッキングにとどまらない。貨物追跡や清算業務など、多様なサービス展開を狙っており、Eブッキングはそのための入り口にもなる。

 台湾船社エバーグリーンは、自社の電子プラットフォーム(PF)「シップメントリンク」を通じた、提供サービス拡充を進めている。

 Eブッキングもその一つで、18年初頭は日本でのEブッキング率は数%だったが、現状は3割以上まで向上した。また、欧ソリューションプロバイダー、ボレロと連携した電子BL(船荷証券)の発行も可能で、日本でもすでにNVOCC(海上利用運送事業者)、ジャパントラストとのトライアルが完了しているという。

 このほど、18年設立の新興企業、米ブルーXトレードと提携。荷主はブルーXのPFを通じた、エバーグリーンへのブッキングやスケジュール検索などが可能になった。今後、運賃決済、保険などの分野でも提携を拡大していく方針だ。