新時代のLNG船ビジネス
 印刷 2019年10月15日デイリー版1面

インタビュー 中小水先区】日本水先人会連合会会長、西本哲明氏。相互支援体制を構築(その1)

日本水先人会連合会会長・西本哲明氏
日本水先人会連合会会長・西本哲明氏

 人手不足や女性の活用など、いま日本で議論の中心となっている諸課題の多くは水先人の世界でも、同じように問われている。今年6月末に水先人の全国組織である日本水先人会連合会の会長に就任した西本哲明氏に、いま取り組むべき課題や運営方針などについて聞いた。(聞き手 幡野武彦)

 --会長就任の抱負を伺いたい。

 「基本的には石橋武・前会長が取り組んできた施策を引き継いで、それをさらに充実させていきたいということに尽きる。水先制度は船舶交通の輻輳(ふくそう)する港や難所とされる水域で船舶航行の安全を図るものだが、その目的を実行する手段として水先人には『応召義務』が課されている。この義務を果たすために、安定的に水先人を確保していくことが肝要だと思う」

■後継者不足解決へ

 --各水先区の状況は。

 「全国35水先区の水先人数は8月末現在で654人。その内訳は1級537人、2級91人、3級26人である。2007年の新制度導入後に入会した水先人はすでに半分以上を占めている。特に5大水先区での比率は高く、東京湾水先区では75%近くになっている」

 「新制度となる『等級別免許制度』が導入されたことで、船長経験者以外の多様な人材確保が可能となったのは大きい。この制度により5大水先区に入会した3級1期生18人は今年で9年目になり、2級水先人に進級し活躍している」

 「さらに伊勢三河湾水先区の新規2級水先人1人が本年10月から、海技大学校(兵庫県芦屋市)の1級進級課程に入った。約3カ月の履修を経て国家試験に合格すれば、晴れて1級水先人となり、新制度による初の1級進級水先人が誕生する見通しである。他の水先区にあっても、2級水先人(新規、進級)が順次1級に進級する予定だ」

 「水先人の後継者不足問題を解決するための施策が10年を経て、効果を発揮しだしたといえるだろう」

 --最近の水先人の採用状況は。

 「外航日本人船員が減少することで水先人の不足が強く叫ばれていたが、内航や官庁など出身母体の多様化や新制度での育成のため、改善傾向にある。内海水先区は以前、10人募集に対し数人という応募状況だったが、今ではほぼ募集員数並みの応募を頂いている」

 「本年、養成中の1級水先人は28人。内訳は外航出身18人、内航出身5人、自衛隊や海上保安庁など官庁出身者が5人。また、これから(新制度での)今後1級進級組と合わせると、今後しばらく続く大量の廃業者にも対応できるだろう。5大水先区では、以前の厳しさは緩和されたのではと思っている」

 「一方、中小水先区にあっては、応募が増えつつあるものの、後継者不足は依然深刻だ」

 --1級以外の募集状況は。

 「現状、3級については10人、2級については5人を募集している。これらの募集人数は、即戦力足り得る1級水先人となる船長出身者が毎年何人水先人に応募してくるかにかかっている。将来の水先人会の人員構成を見ながら判断していくことになる」

■他の水先区免許も

 --課題である中小水先区の状況は。

 「先に述べた通り、若干の改善方向にあるとはいえ、喫緊の課題であることに変わりはない。『水先人の人材確保・育成などに関する検討会』では『2級・3級水先人の業務範囲の見直し』が議論されている。水先人各級の制限トン数について、現在の制限(2級は上限5万トン、3級は上限2万トン)を1万トンずつ引き上げることになれば、中小水先区でも2級水先人を募集することができるので、応募者の広がりが期待できる」

 「この施策に加え、地域ごとに中小水先区の水先人が近隣の他の水先区の免許を取得して支援する相互支援ネットワークが構築されつつある。例えば、北海道地区では道内6水先人会がそれぞれ複数免許を持つことで相互に支援できる体制となり、日本海地区においても同様の支援ネットワークを構築した。こうした中小水先区のネットワーク構築は5-6年前から進めており、着実に進んでいる。これに加え大規模水先区からの派遣支援を組み込み、全国的な支援体制を構築している」

■3面に続く

 にしもと・てつあき 東京商船大(現東京海洋大)航海科卒。71(昭和46)年日本郵船入社。91年から同社で船長。東京湾水先区水先人会会長などを経て、19年6月から現職。70歳。