2019 日本コンテナ航路一覧
 印刷 2019年09月04日デイリー版1面

MariTech×ShipDC 海事未来図】(10):NAPAジャパン社長兼NAPA副社長・水谷直樹氏/業界間コラボレーション鍵

NAPAジャパン社長兼NAPA副社長・水谷直樹氏
NAPAジャパン社長兼NAPA副社長・水谷直樹氏

■3Dモデル創生

 --NAPA社の概要を聞きたい。

 「船舶の設計、運航に特化したソフトウエア会社で、1989年に設立された。本社をフィンランドのヘルシンキ市に置いている。従業員数は180人で、売上高は2200万ユーロ(約27億円)水準。事業部として設計支援システム(デザイン)、安全航海システム(セーフティー)、運航支援システム(シッピング)の3つを持つ」

 「売り上げのうち設計支援システム事業が約半分、残りの2事業で約半分となっている。日本法人はこの3事業に関する営業活動と、アフターサービスを含めたサポート業務を手掛けている」

 「船の設計は初期設計、基本設計、詳細(生産)設計と大きく3段階に分かれる。当社の設計支援システムは、上流といわれる初期設計と基本設計で利用される。NAPAはこの上流設計段階から3D(3次元)モデルを創生しており、高精度な設計検討ができる。毎年建造される新造船の95%はNAPAの設計支援システムを利用しており、上流設計のデファクトスタンダード(事実上の標準)となっている」

 「NAPAはフィンランド語で『へそ』の意味。当社のロゴがシステムの概念を象徴しているが、ロゴのへそ=中心に1つのNAPA3次元モデルが描かれている。この3次元モデルを中心にして、運航支援システムなど他のシステムとの結合も可能となっている」

■新サービス開発

 --設計支援システム以外のシステムにはどのようなものがあるか。

 「安全航海システムとして、幅広い船種での安全で最適な貨物や燃料などの積み付け計画をサポートするローディングコンピューター、電子ログブック(航海日誌)などを提供している。運航支援システムに関しては、運航モニタリング、運航燃費最適化、性能解析サービスなどを手掛ける」

 「運航支援システムの売り上げのうち、日本向けが半分以上を占める。LNG(液化天然ガス)船などでの導入が増えており、AIS(船舶自動識別装置)データやヌーンリポート(1日分の航海記録)を使った新サービスなどいろいろな取り組みを進めている」

 「3事業でそれぞれソフトを提供しているが、現在はウェブポータルとして『NAPA Fleet Intelligence(NAPAフリート・インテリジェンス)』を設けている。今後インターネットにアクセスする環境があれば、このポータルを介して、幅広いソフトを顧客は利用できるようになる」

■もっと多くの船に

 --日本の海事産業に関するデータ共有基盤IoS(船のインターネット化)-OP(オープンプラットフォーム)に参加を決めた理由は。

 「単純だが、『もっと多くの船にアクセスしたい』ということが大きかった。これまで自身のデータ収集システムを搭載する船からのデータを利用してきたが、対象隻数が限られていた。当社はソフトを開発する会社で、データ収集ではなく、収集した後の業務に注力したい。IoS-OPは、これを可能にしてくれる」

 「2012年から、後に親会社となる日本海事協会(NK)と共同で、最適運航システム『ClassNK-NAPA GREEN』の開発を開始した。このシステムでは、搭載船からのデータをベースとしてきたが、今後はIoS-OPからのデータを利用することもできる。収集できるデータが少ない船舶向けとして、ヌーンリポートだけをシステム搭載船から受け取り、IoS-OPなど外部からのデータを組み合わせるサービスも始めている」

 --IoS-OPに何を期待するか。

 「データを収集できる対象船が増え、これにより価値を得る関係者が拡大すること。運航データのほか、将来的にはMRV(燃料消費実績報告制度)などリポートデータも利用できるようになれば、開発されるソフトやサービスなどの価値が高まると思う」

 「鍵となるのは『コラボレーション』。例えば、造船で作成した上流設計の3Dモデルなどのデータが運航でも利用され、さらに運航で蓄積されたデータが造船所の設計にフィードバックされれば良い。海運と造船の間だけでなく、IoS-OPに参加する全てのメンバー間でのコラボも期待している」

 「IoS-OPは、海事産業を構成する多くのメンバーからIT(情報技術)関係者が集まり組織化されたことで、既に一定の成果を得た。今後は、各メンバーの経営層が理解を深め、デジタル化の方向性を定めることなどまで踏み込む必要があると考える」(週1回掲載)

 みずたに・なおき 91(平成3)年、横浜国大工卒、川崎重工業入社。01年NAPA入社、07年NAPAジャパン設立・代表取締役就任。17年NAPAグループの運航支援システム事業部長および副社長兼務。岐阜県出身、50歳。