2019 日本コンテナ航路一覧
 印刷 2019年08月26日デイリー版1面

IMO2020 SOx規制】ECL/タンク洗浄、早期開始。一部荷主とBAF合意、コスト反映も着々

自動車船
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多目的貨物船
多目的貨物船

 2020年1月開始のIMO(国際海事機関)のSOX(硫黄酸化物)規制が目前に迫りつつある。海運各社は現在、準備作業として規制適合油の確保や燃料タンク洗浄、荷主とのBAF(燃料油割増金)を巡る交渉など大きな課題に直面している。かつてない船舶燃料の大転換に向けた対応策について、多目的貨物船・自動車船オーナーオペレーターのイースタンカーライナー(ECL、本社・東京都)に聞いた。(柏井あづみ)

 ECLは自社船、用船を合わせて自動車船約20隻、多目的船約20隻を運航している。同社はSOX規制に備え、7月1日から順次、運航船のタンク洗浄作業を開始した。

 「SOX規制は準備期間を含めて対応が難しいが、当社は海象・気象の変化も考慮し、規制開始の半年前から余裕を持って切り替え作業をスタートさせている」

 伊藤幹夫常務理事在来・多目的船部長はそう話す。

■MGOで残油希釈

 船隊40隻強のタンク洗浄を進める上で、ECLは硫黄分0・1%の低硫黄MGO(マリンガスオイル)を活用している。

 燃料タンク中の高硫黄C重油は、ポンプで最大限に吸引しても、タンク底部に吸引不可能な燃料が一定量残ってしまう。

 ECL船隊では残油量を可能な限り削減。それでもタンク底部に残ってしまう高硫黄油を低硫黄MGOで薄め、混合安定性を保持させ、国際的な取り組みである環境規制へのコンプライアンス(法令順守)徹底を図っている。

 洗浄後のタンクには規制開始前であっても、硫黄分0・5%以下の適合油を給油し、低硫黄状態を維持していく。

 こうした洗浄作業は、1タンク16-17日間かかり、4タンクを備える在来貨物船では、うまく組み合わせても40-50日必要になる。

 「洗浄がうまくいかず、20年1月以降に高硫黄油がタンクに残ってしまったらデバンカーしなくてはいけない。1隻ずつのスケジュール感が非常に重要だ」(伊藤氏)

 スラッジ分散剤の改良に向け、ECLの工務監督とメーカーが協力し、1年以上にわたり効果の検証に注力。高硫黄残油と低硫黄MGOそれぞれの最適混合比とスラッジ分散剤の最適な投入量、濃度や温度といったケーススタディーを重ねてきた。

 用船の規制対応を巡り、船主とのコミュニケーションも重視している。既にタンク洗浄の手順や油種変更に伴う用船契約書の改定について合意済み。スラッジ分散剤は船主負担、MGOによる洗浄コストは用船者のECL負担となり、洗浄作業が本格化するほどコストアップが大きくなっていく。

■200ドル差で月2億円

 ECL船隊約40隻の燃料油消費量は月1万トン前後。SOX規制により燃料油価格がトン当たり200ドル上昇すれば、月2億円のコストアップにつながる。

 伊藤氏は「この問題は日本だけでなく世界規模の環境保全であり、海運会社だけが被る問題ではない」ことを強調。その上で「今秋以降の事前準備を含めて、規制対応コストをBAFやエマージェンシーサーチャージに反映してもらわなければ、事業として立ち行かなくなる」と海運会社の置かれた状況を説明する。

 ECLの荷主は鉄鋼、建設機械メーカー、自動車メーカー、中古車、プラント業界など多岐にわたる。同社は規制対応によるコストアップについて、過去1年半かけて荷主に丁寧に説明し、運賃への反映を要請してきた。

 「海運会社だけが負担を強いられるならば、健全な安全・安定輸送を脅かす規模のコスト増が世界の海上輸送を利用する業界全体に影響を及ぼす。ましてや当社よりも運航隻数の多い国内外の大手海運会社の負担は莫大(ばくだい)なものになる」(伊藤氏)

 ECLは現在、複数の荷主と10月以降の運賃とBAFに関する交渉を推進中。最近、一部メーカーと10-12月期の運賃とBAFについて、直近のMGO平均価格を基準とするBAFを導入することで合意。今秋の燃料切り替え時期のコストアップが運賃に反映されることになった。

■追加設備の導入も

 ECLは20年1月以降、規制適合油として硫黄分0・5%のVLSFO(低硫黄重油)を使用する方針。ただ、マイナー港などでVLSFOが確保できない場合、割高な低硫黄MGOを使用することが想定される。

 MGOを恒常的に使用する場合、燃料油の温度を下げて粘度を調整するチラー(冷却装置)や、火炎喪失が起こっていないかを監視するフレームアイ(炎検出器)などの追加設備が必要になる可能性がある。