2019 日本コンテナ航路一覧
 印刷 2019年08月23日デイリー版1面

インタビュー トップ10への離陸】近鉄エクスプレス社長・鳥居伸年氏/生き残りへFW注力(その1)

近鉄エクスプレス社長・鳥居伸年氏
近鉄エクスプレス社長・鳥居伸年氏

 近鉄エクスプレス(KWE)は5月、将来のグループ像を示す「長期ビジョン」を公表した。「グローバルトップ10ソリューションパートナー-日本発祥のグローバルブランドへ」を掲げ、航空100万トン、海上100万TEU達成へまい進する。鳥居伸年社長は「生き残りにはフォワーディングへの集中が必要」と語る。欧米大手が統合などで規模を拡大する中、日本的サービスなどを強みとするフォワーディングにリソースを集中し、グローバル市場での存在感を高めていく。(聞き手 岬洋平、佐々木マヤ)

 --前中計を振り返って。

 「業績目標は、当初予定していなかった減損で純利益が未達も、売上高、その他の利益はいずれも過去最高数値を達成できた。物量目標は途中修正もあったが、好調な市況にも支えられ、航空輸出60万トン、海上輸出70万TEUという目標をクリアした。現場が一丸となって頑張ってくれた結果だが、昨年度後半から向かい風になっており、今後はもう一歩も二歩も踏み込んで物量拡大に取り組まなければならない」

 --海上は市場全体が大きく伸びていない中で、大幅な伸びを記録した。

 「やはり現場の努力が大きい。海上・航空の一体営業により、従来主力だった航空での顧客に海上商品を積極的に販売していった。また、船社の経営破綻、統合などの環境変化で、NVOCC(海上利用運送事業者)がサービスを提供できる機会が増えたことも背景にあるだろう」

 --長期ビジョン、新中計の狙いは。

 「世界的にはメガフォワーダーの統合なども進んでいる。われわれが生き残る道を考えた時、選択と集中を進める必要がある、幸い、先人たちの努力で構築したネットワーク、ナショナルスタッフを含めた人材には恵まれている。得意とするフォワーディングに集中・特化できれば、(国際大手と伍(ご)して)活躍できる余地はあるはずだ。デジタル化が進展しても、BtoB(企業間物流)においては、特に日系特有のサービス品質、ノウハウをご利用いただける部分は大きい」

 「KWEは日系競合と比較して外資系荷主に強いという評価を頂いてきたが、実際には日本発着での関係が大半だった。前中計では日本を絡めない、欧米-アジア間などでも、外資大手からの物流受託が進んだ。選んでいただける理由を改めて見直し、磨き上げることが生き残りの鍵だ」

 「長期ビジョンとして売上高1兆円規模を掲げたが、そういうスケールの大きい組織に帰属しているということでモチベーションも上がる。環境変化が激しく、時期を明確にすると自分で自分の首を締めかねないため、方向性を明示した」

 「『日本発祥のグローバルブランド』には、日本流のグローバル企業になる、という思いが込められている。われわれが(外資荷主など)海外で認知されている理由は日本的なサービス。ナショナルスタッフも非常に日本的なマインドを持っている」

■経営機能を分離

 --新たに日本本部を設置した。

 「東京にあるKWE本社の経営陣が、全世界を管理していると、どうしても日本のやり方がスタンダードになりがち。営業手法、人事制度など東京本社のやり方が世界に派生するが、それが本当にグローバルスタンダードなのか。人員数を見ても日本法人が重要なことは確かだが、全社のコーポレート機能と、日本という一市場・一極を管理する機能は切り分けた方が、会社として筋が通っている。グローバル企業として次の段階に進むための組織再編だ」

 「比較的進出の早かった米国、香港などでは日本型人事制度が定着している。日本型そのものが悪いということではないが、いつまでもそのシステムで優秀な人材の採用ができるのか。会社としての指針を定め、各国ごとにローカライズするという仕組みを作るためにも、(日本本部設置により)経営機能の切り分けが必要だった」

■システム改善へ

 --システム投資、人材育成については。

 「既存システムは一定の機能を有する一方、煩雑な入力作業が発生するなど、社内のユーザーから見て使い勝手が悪い面がある。今後の物量拡大には、業務効率が高いシステムが必要。顧客とのEDI(電子データ交換)などにも影響するためシステム全体の改修については検証が必要だが、まずユーザーインターフェースの改善に着手する」

 「フォワーディングはノンアセット型で、人材によるところが大きい。若い世代を育成する意味で、今までも各拠点でバラバラにやってきた研修・トレーニングの仕組みも見直したい。働き方改革も重要だ。現場で活躍している優秀な優秀な女性社員は多いが、フォワーディング業界は夕刻以降も多忙。産休や(育児などに伴う)時短勤務を取りづらい、帰りづらいという環境では、結局働きにくく離職ということもある」

 「在宅勤務も職種によっては難しい。これまでのKWEはよく言えば少数精鋭だったが、あまりにギリギリの人員では周囲に負荷がかかる。必要経費として、一定の人員を増やす必要がある。優秀な人材に長く働いていただくためにも、効率化とは別の観点で、働きやすい職場環境を整える」(3面に続く)

 とりい・のぶとし 82(昭和57)年明大法卒、近鉄航空貨物(現近鉄エクスプレス)入社。10年執行役員フォワーディング営業部長、11年執行役員輸出営業部長。12年取締役米州本部長。16年6月から現職。60歳。