2019 日本コンテナ航路一覧
 印刷 2019年08月21日デイリー版2面

MariTech×ShipDC 海事未来図】(8):日本郵船経営委員デジタライゼーショングループ長・鈴木英樹氏/デジタルで“三方良し”実現(その2)

データ収集の重要性を語る鈴木経営委員
データ収集の重要性を語る鈴木経営委員

■性能差を可視化

 「共通言語ができた後は、それぞれがどう自分たちの『物語』(強み、優位性)を描くかが競争力の差になる。ここからは国語のテストであり、問題をどう解いていくかが差別化の世界だ。この変化をビビッドに感じられない企業は脱落する。意識を変えず、現状でいいという企業は、独自に生き残るスペースを見つければいい。ここに造船所の差が見えてくる」

 「営業陣が技術に不案内だと、同じ船型なら安い造船所に発注すればいいという考えになる。しかし、どの造船所の建造船が、どういうパフォーマンスで、どういう事故や不具合があったということが可視化されれば、造船所・船種ごとのパフォーマンスチェックが可能になる。データ収集には5年、10年という時間がかかるが、確実に世界を変えていくだろう」

 「逆に造船所側も、これだけ性能が違うので、この分を(船価に)上乗せしてくださいという数字を、根拠を持って言えるようになる。これまでは海運会社もデータを出さずに『中国建造船も悪くないよ』と交渉材料に使うなど、大きな情報の非対称性があった。シップデータセンター(ShipDC)により、データの民主化が進めば、堂々と同じ数字を使って話ができる。造船所側も自分たちのクオリティーを付加価値として数字でアピールできる」

■標準化けん引せよ

 --他システムとの連携などはどう考えるか。

 「例えば、(アジア以外で造船・海運業が盛んな)欧州はEU(欧州連合)・各国政府の補助制度もあり、先進的な研究に取り組む人々が多い。切磋琢磨(せっさたくま)をしながら、相互に共同してやっていく世界がある」

 「翻って、日本はややスピード感に欠けるという印象もある。ShipDCも現状にとどまっていていいのか。(造船業での競合国である)中国、韓国はデータを巡る取り組みをまだはっきり打ち出していない」

 「ShipDCが先手を取って、『データを見える』世界を標準にするべきではないか。(日本連合の)『オールジャパン』も良いが、さらに外部の人々も巻き込んで、スピードアップしていかなければならない。頑張った人が報われる世界をつくることで、多くの関係者にとってのブルーオーシャン(未開拓市場)を広げることになる」

 「データは集まった情報の量に比例して価値が高まる。ShipDCはグローバルプラットフォームであるべきで、どんどん外部の関係者に参加してもらった方が良い。日系企業だけの集まりでは、日本人の考え方に収れんしてしまう。異なる感覚を持つ人たちを取り込むことで、より改善できるという観点を持った方が良い。ダイバーシティー(多様性)が重要だ」

 「欧州は自分たちの利害そのものよりも原理原則を重視する。日本の産業のため、という考えだけでは折り合わない。原理原則として、こういうことがしたいと訴えれば、国境はなくなる」

 「データそのものは世界共通語であり、内にこもる必要はない。6月のG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)で提唱されたDFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト、信頼されたルールに基づくデータの自由な流通)の流れもある。EUも巻き込み、海運業界のデータ標準化をリードしていくという気概を持って取り組んでほしい」

(週1回掲載)