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 印刷 2019年08月14日デイリー版4面

記者の視点】鈴木隆史:戦争保険料急騰/転籍など副次的な動きも注視

 中東情勢の緊迫化を背景に、船舶戦争保険の保険料率が一気に上昇した。5、6月のタンカー攻撃事件の前と比べ20倍という急騰ぶりだ。

 戦争保険は紛争などで発生した船舶、船員の被害を補償するもの。船体価格に一定の割合(保険料率)を掛けて算出される。

 国内の保険会社によると、湾岸戦争(1991年)など過去の紛争時には、実際に適用はされなかったものの、船体価格の10%にまで急騰したこともあったという。仮に船体価格100億円のVLCC(大型原油タンカー)の場合、1航海で10億円もの保険料が発生する計算だ。

 これほどまでの水準ではないが、8月から戦争保険の保険料率は0・5%に上昇した。6月以降、既に従来比10倍になっていたが、そのさらに2倍、つまり従来比20倍に跳ね上がった。

 7月に入ってからもタンカー拿捕(だほ)が発生するなど、中東情勢は一向に沈静化の兆しが見えず、料率を定める英国の保険業界(アンダーライター)が引き上げに動いた。

 戦争保険は中東沖で指定された危険海域(除外水域)に配船される全船に適用されるが、今回の料率アップを巡っては、もともと英国籍船だけが上昇するとの見方が強かった。

 英国籍船がターゲットとして浮上したのは、5、6月の事件後、米国がイランの関与を指摘した際に、その声に同調する動きを示しイランの反発を招いたことや、実際にイラン革命防衛隊から英国籍船が拿捕される事件が起こるなど、配船リスクが顕在化したため。

 戦争保険はVLCCなどでは、運航指示を行う石油会社などの荷主(用船者)が負担するケースが一般的だ。

 船主が支払うことは少ないとされるが、運航コストが極端に高まれば、そもそも用船者から選ばれなくなる可能性もある。ここ1カ月、そうした懸念を抱いた英国籍船の船主による他の旗国への転籍の動きが日本国内でも確認された。

 こうした中、英国政府は5日、米国が志向する有志連合に参加する方針を発表した。米国の呼び掛けに応じたのは主要先進国で初。有志連合は、昨今の中東情勢の中では「イラン包囲網」との見方が強まっている。

 参加することでイランからの反発は避けられない。中東への配船リスクは一層高まる可能性がある。

 中東情勢の緊張が続く中、原油の安定輸送の動向、海運会社の安全確保策などと併せ、戦争保険の変動、それに伴う転籍など副次的な動きも注視していきたい。