2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年08月13日デイリー版2面

国内船主の今】(178):円高は悪?為替の巧拙/信金ドル融資、円転換の好機

 8月9日、3連休前の金曜日。東京外国為替市場で円相場が1ドル=105円の取引に入ると、海運ブローカーがつぶやいた。

 「円高は必ずしも悪ではないはずだ。ドル融資を円転換すれば、円船価の総額は減る」

■BBCは本体価だけ

 「円高=悪」が日本の海運業界の常識。しかし、BBC(裸用船)を対象にした既存船の仕組み替えが増加した現在、BBC船主にとって円高は為替の巧拙が問われる場面でもある。

 BBC契約は日本船主を介在した純粋な融資契約と言える。

 海外オペレーター(運航船社)が自社船を日本船主に売却、日本船主は地方銀行から融資を受けて船舶を購入し、そのまま海外オペに再用船として出す-。

 これがBBCスキームの基本形である。

 伝統的な定期用船と決定的に違うのは、船舶管理をBBC用船者=海外オペが完全に支配する点にある。従来の定期用船では、日本船主は船舶の資本費プラス船舶管理費用を込みで、海外オペなど用船者に貸し出していた。船舶管理費用などでコストを圧縮することで、日本船主は競争力=収益を出すこともできた。

 しかし、BBC契約の場合、日本船主は船舶管理を行わないため、日本船主としては船舶の資本費部分=本船の本体価格だけを対象に海外オペと用船料契約を結び、貸し出すことになる。

 商社関係者が話す。

 「つまり、日本船主がなぜBBC契約に必要かといえば、単純に地方銀行が海外オペに直接融資できないから。日本船主を立てることで、地銀としても与信の判断ができるし、日本船主としても償却資産を確保できる」(船舶部)

■100円なら円転が得

 肝心の円高に話を戻そう。

 純粋な金融商品に近いBBCの場合、日本船主にとって最大のリスクは為替になる。仮に既存船の購入資金を地銀から円建てで融資してもらった場合、海外オペからの用船料収入は100%ドル払いのため、「ドルで得た収入を円に換算する」という行為が必要になる。

 1ドル=110円の場合、1日当たり6000ドルの用船料収入は66万円。だが、同105円ならば63万円。たかが3万円と言えないのは、これが数カ月、数年続くためである。

 定期用船のように船舶管理を緩衝剤として使えない日本船主は当然、リスクヘッジのため、地銀だけでなく信用金庫からさえもドル融資を受ける。

 地銀関係者が話す。

 「メガバンクのようにドルの預金が豊富にあるわけでもなく、地銀のドルの調達コストの金利は高くなる。信用金庫はさらに調達コストが増してくる。こういう状況では、乗り出し時から金利負担で収支が合わないBBC契約さえあるはずだ」(船舶融資担当者)

 そこで円高である。

 ある日本船主が1ドル=110円時点で1000万ドル相当の船価の既存船を購入したとする。信金から1000万ドルのドル融資を受けた場合、当時の円船価は11億円。しかし、現在の105円に融資を円転換すれば円での船価は10億5000万円となり、総額は5000万円減る。マルチカレンシー(為替変更)の手数料を差し引いても、円転する日本船主が出てきてもおかしくないという。

 ドル融資でBBC契約を手掛ける有力船主が話を引き継ぐ。

 「正直、105円ならまだ様子見だ。しかし、100円なら間違いなく円転換する。これからさらに円が90円まで進むならパーチェス・オプション(購入権)の際のドル受け取りに大きなマイナスが出るが、そこまで円高が進まないとみれば、円転換する」(今治船主)

 円高=悪のイメージは根強い。しかし、薄利の中でしたたかに生き抜く船主は、為替変動の中にビジネスの商機を見いだしている。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載

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 今週は月曜日が休刊日のため、火曜日に掲載しました。