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 印刷 2019年08月07日デイリー版1面

MariTech×ShipDC 海事未来図】(6):JMU常務執行役員技術本部長・安部昭則氏/日本はデジタル化で巻き返せる(その1)

JMU常務執行役員技術本部長・安部昭則氏
JMU常務執行役員技術本部長・安部昭則氏

 --ジャパンマリンユナイテッド(JMU)でのデジタル化に関する取り組みを聞きたい。

 「2013年の発足から6年たち、ようやく本格的にデジタル化を推進していける状態になってきた。今年度、ものづくりの基準とシステムを統括する技術本部を設立し、その下に技術標準を統一する技術統括部と、CAD(コンピューター利用設計システム)を含めたICT(情報通信技術)システムを統括するICTセンターをつくった。一方、生産面では、事業所によって船種も設備も違い、正しい比較がしにくいために良い競争環境を整備しきれなかった反省に立ち、生産の集中管理とデジタライズを推進する生産センターを設置した」

 「JMUには強い個性と伝統を持つ事業所が5つある。これら事業所群をあたかも一つの造船所がドックを10本持っているように運営するためには、各事業所の状況と実績が常に数値で見えていることが重要だ。2つの新設組織により、統合当初からコツコツと進めてきたことを、JMUのセカンドステージに向かって今年は大きく加速させる」

 「今回、日本の海事産業に関するデータ共有基盤『IoS(船のインターネット化)オープンプラットフォーム』(IoS-OP)を通じて集められた情報は、商船事業本部の海上物流イノベーション推進部を通じて、新船型開発や、新しい海上物流サービスの提案につなげていきたい」

■一歩先行く技術開発を

 --会員組織のIoS-OPコンソーシアム参画の狙いは。

 「社として独自に行っているデジタル化とは別に、世の中の船の就航後の状況を広く集め、開発・設計・建造にフィードバックしたいという考えがあった。個人的な見解だが、これまで造船業は製品の就航後にあまり関心を持たず、どこまで良いスペックのものを造れるかという点に喜びを感じていたのではないか」

 「しかし、ものをスペック通りに造れる世界は、中国や韓国でもすでに実現できている。海事クラスターに属している中で、ものを造って満足しているだけでは、不十分な時代となった。オープンプラットフォームから有益なデータを引き出し、ノウハウを獲得し、事業に生かしていきたい」

 「例えば自動車メーカーでは、デジタル化に伴って自動運転や電気自動車が実現し、大きくものづくりが変化している。自律運航船や自動運航船が出てきたら、それこそ海運や造船を知らない企業が参入してくるだろう。この業界で一日の長があるわれわれが、一歩先んじて技術開発に努める必要がある。そう簡単な話ではないが、データを分析することで、船主がまだ見つけていない価値やサービスを提案できるかもしれない」

■見える化で生産性向上

 --日本の造船業への危機感がある。

 「現時点で造船のデジタル化は相当遅れていると認識している。造船におけるデジタル革命が今後、海事産業にどう影響を与えるのかという点を考えると、設計から建造までの全工程をきちんと見える化できれば生産性はまだまだ上がると思う。遅れているからこそ、これからのジャンプは大きいのではないか」

 「造船は、当初はものすごく進歩したデジタル産業だったが、途中で他産業に追い付かれ、その後の長い不況により大きく遅れてしまった。機械化率が低く、人が必要で、すり合わせでやる産業だからデジタル化が難しいというのは間違い。デジタル化に合わせて設計も、ものづくりも変えていかなければならない」(2面に続く)

 あべ・あきのり 77(昭和52)年東大工卒、石川島播磨重工業(現IHI)入社。02年アイ・エイチ・アイマリンユナイテッド(IHIMU〈現JMU〉)、10年取締役横浜工場長。12年IHI執行役員海洋鉄構セクター長、14年同取締役常務執行役員海洋鉄構セクター長兼ソリューション統括本部長、16年同エグゼクティブフェロー。17年JMU常務執行役員有明事業所長を経て19年4月から現職。福岡県出身、64歳。