2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年08月05日デイリー版2面

国内船主の今】(177):市況上昇、邦船痛し痒し/造船業、水割り作戦の是非

 1日。酷暑が続く東京都心。気温が35度に達する中、造船の営業マンが汗を流しながらつぶやいた。

 「水割り作戦は最終手段。しかし、現状ではそれすら使うことはできない」

■そもそも高価船なし

 水割り作戦。2008年のリーマン・ショック前の海運好況期に海運大手がたびたび使った手法だ。

 不定期船営業マンが話す。

 「08年前半時点のピーク時のケープサイズの新造船価格は1隻当たり100億円。資本費プラス船舶管理費の採算ラインは1日当たり4万-5万ドル。さすがに高い船ばかりでは収益を圧迫するため、時間を置いて船価の安い船を発注。船隊全体の船価を“薄めて”、個船ごとの収支を下げる作戦だ」

 リーマン・ショック後、市況が崩壊した際にはこうした「水割り作戦」がオペレーター(運航船社)、船主主導で繰り返された。結果的に造船所は船価が下がったものの、「受注に困ることはなかった」(前述の造船営業マン)。

 それが今や水割り作戦もできないというのだ。

 どういうことか。

 商社関係者が話す。

 「単純に、高い船価での発注船がないということ。造船所が現在、線表(受注)を固めている船は2-3年前の16-17年に発注された新造船。当時を振り返ってほしい。韓国の韓進海運や欧州のWBC(ウエスタン・バルク・チャータリング)が破綻し、それ以外でも用船料の減額が吹き荒れたころだ。船価は低迷していた」(船舶部)

 水割り作戦は、造船所が高船価で新造船を受注していればこそ、抱き合わせで追加の新造船は値引きできるというもの。そもそも高船価船がなければ、水割りにはならない。

 造船営業マンが再びつぶやく。

 「海運大手の第1四半期(4-6月期)は黒字転換したというが、新造用船の話は本当にない。むしろオペはいまだに船主に返船を進めている。この1-2年の辛抱というが、本当に造船は辛抱できるのか」

■スクラバー工期遅れ

 「スクラバー(排ガス浄化装置)のレトロフィット(既存船への据え付け)の工期が予想以上に伸びている」

 海運大手のドライバルク担当者が神妙な顔つきで取材に答えた。

 海運大手はおおよそ支配船の1割にスクラバーを搭載する。日本郵船、商船三井、川崎汽船の運航船(自社船・定期用船の合計)は各社約700-800隻。1社当たり70-80隻にスクラバーを導入する計算だ。

 海運大手営業マンが話す。

 「鉄鋼メーカーや石油会社、電力など大口荷主向けの専用船を中心にスクラバーを搭載する。スクラバー自体の搭載は数億円の投資だが、問題なのはドック入りの期間が想定以上に長いことだ」(不定期船担当者)

 当初2週間程度とされていたスクラバーのレトロフィットは、船種によっては40日以上の据え付け工事期間がかかっている。

 不稼働船舶の増加は、間接的に市場で運航できる船腹量を削減。「結果的に、ドライ市況の押し上げ要因になっている」(海運ブローカー)

 海運大手はここ数年、フリー船の圧縮を進めてきた。7月下旬、ケープサイズ市況は一時、採算ラインを上回る1日当たり3万ドルに達したが、「市況を享受できるフリー船はほとんどなかった」(海運大手幹部)。

 ドック入りによるオペの不稼働船舶の増加が、ドライ市況の上昇につながる。オペにとって「痛し痒(かゆ)し」の市況上昇は当面続きそうである。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載