2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年07月31日デイリー版1面

MariTech×ShipDC 海事未来図】(5):東京海上日動火災保険・海上業務部部長兼船舶業務グループリーダー・片岡敏彰氏/保険・運航データを融合

東京海上日動火災保険・海上業務部部長兼船舶業務グループリーダー・片岡敏彰氏
東京海上日動火災保険・海上業務部部長兼船舶業務グループリーダー・片岡敏彰氏

■新たな価値創出へ

 --日本海事協会(NK)の子会社であるシップデータセンター(ShipDC)が手掛ける船舶運航データの流通に関する共通基盤「IoSオープンプラットフォーム(IoS-OP)」のコンソーシアムに参加した経緯や狙いは。

 「保険というサービスを通じて、企業や業界の挑戦をサポートすることがわれわれの使命になる。船舶保険を提供することで、日本の海事クラスターの発展にいかに貢献していくか。船級協会をはじめとする関係者と連携しながら、次世代の船舶保険の在り方を模索している」

 「IoS-OPが立ち上がったことで、船舶運航に関するビッグデータへのアクセスが可能になった。それらの運航データと保険事業を通じて蓄積してきたデータとを融合すれば、新しいサービスを生み出せるかもしれない。アンダーライティング(保険引き受け業務)などにも生かせる可能性がある。そういった理由で参加を決めた」

 「保険会社は過去のデータに基づき商品を開発し、保険料を設定する。その過程にビッグデータをいかに組み込むかが大きな課題となっている。世の中がデジタルの時代に移り変わっていく中で、保険業界がデジタル技術をどのように昇華していくか。IoS-OPはその道筋の一つであり、われわれにとって重要な意味を持つ」

 --どういった新しいサービスが考えられるか。

 「ロスプリベンション(損害防止サービス)に応用できる。これまでは過去の事故事例を統計的手法で分析して、勉強会などを開き船主に対策を呼び掛けてきた。今後はIoS-OPを介し、事故やトラブルにまつわる、より多くの情報に触れることができる。事故予防につながるより具体的でタイムリーな助言も可能になる」

 「IoT(モノのインターネット化)の進化により、主機関の排ガス温度の変化など本船の運航状態が陸上でもきめ細かく把握できるようになった。われわれから船主に対し、運航データ収集・送信装置やモニタリングシステムなどの搭載を推奨することもあり得るだろう。われわれは機器を自前で開発できないので、パートナーと協業しお互いのノウハウを持ち寄り、事故予防の高度化につなげていきたい」

■保険料設定に活用

 --アンダーライティングに船舶運航データをどう活用するか。

 「保険料の値決めの部分に活用できると思う。過去のデータに基づく事故の発生確率や保険金の支払い実績などに応じて保険料が決まる。ビッグデータを有効活用することで、これまで認識していなかったリスクや事故傾向の可視化とその予測精度が高まれば、よりリーズナブルな保険料の設定も可能になるかもしれない」

 --自動運航船は船舶保険に何らかの影響を及ぼすか。

 「いくつかの側面があり、今まさに議論されているところだ。船舶の自律化・無人化を見据えて、船舶の定義自体を見直す必要性が指摘されている。また、運航形態によって現行法の適用範囲や責任所在の考え方が変わり、保険サービスの顧客も変わり得るため、法的枠組みの議論の行方を見守っている」

 「自動運航船の実現に向けた論点を整理するために、7月2日に『海洋システム連携基盤(Sea PaaS)プラットフォームテクノロジーカンファレンス』を主催した。産官学の専門家に登壇していただき、技術・法律の両面から課題を解説してもらった。遠隔操船による自動運航船が具体化しつつある中で、自動運航船に対応した法制度の整備も急ぐ必要があると思う」

 --海事産業のデジタル化をどう評価するか。

 「海難事故やトラブルは減少するだろう。船舶事故の70%はヒューマンエラーに起因するとされる。人為的な損害はコンピューター化で減らせるはずだ。一方で、新たなリスクの出現や事故自体が巨大化する恐れもある。サイバー攻撃による事故も含め類似の事故が同時多発的に発生する事態も想定される」

 「海事産業だけでなく、保険会社もある意味では脅威にさらされている。過去の統計データに基づき保険料を算出する従来型のやり方に代わり、まったく異なる手法で精緻な保険料設定を実現する会社が出てこないとも限らない。保険会社も変わらなければ生き残れない。IoS-OPへの参加をわれわれが変化する原動力にしていきたい」

(週1回掲載)

 かたおか・としあき 88(昭和63)年東大卒、東京海上日動火災保険入社、船舶営業第一部配属。10年西日本船舶営業部今治支社長、14年4月から現職。53歳。