2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年07月29日デイリー版4面

記者の視点】五味宜範:小さい頃から業界に触れる意義/「あの時の歓声」が「未来のチカラ」に…

 今月、相次いで瀬戸内の2造船所で、進水式を見学した。進水した2隻のうち1隻は、常石造船の常石工場(広島県福山市)での8万1600重量トン型カムサマックスバルカー、もう1隻は興亜産業(本社・香川県丸亀市)が建造中の499総トン型内航ケミカル船(薬槽船)。梅雨の季節で快晴ではなかったものの、雨も降らずそれぞれの式典とも滞りなく終わった。

 日本中小型造船工業会と日本財団は毎年この時期、「海と日本PROJECT」の一環で、小中学生を対象とした造船所・舶用事業所見学会「この地球で一番大きな工業製品『船』を見に行こう!!」を開催している。今年で5年目で、国土交通省の協賛も受け、北は北海道から南は沖縄県まで全国各地で7、8月の2カ月間、「海の日」を挟んで集中的に実施している。

 今回参加した常石造船と興亜産業の各進水式も、今年の「この地球で一番大きな工業製品『船』を見に行こう!!」の対象となっており、小学生などが多数見学に来ていた。両造船所の建造設備は、ドックではなく船台。くす玉からの紙吹雪が舞う中、紙テープをなびかせながら船が海に向かって滑っていく光景に、「うわー」という声があちこちで聞こえた。

 常石造船の進水式では、進水後に見学者が船台に上がり、船台がどうなっているのか見ることができた。船台には、直径9センチ程度の鋼製ボールを利用したボール進水設備がある。船を滑りやすくするためのものだ。鋼製ボールは、砲丸投げで使うような鉄球で、実際に触れることができた。

 船台にいる見学者に向かって、餅まきも行われた。餅はそれなりに重量があり、飛んでくると多少の怖さがあるが、大人も子供たちも喜んでいた。

 自身は海のない長野県出身で、小さい頃にこのような進水式を見学したことがない。船の範疇(はんちゅう)に入るものとして見たことがあるのは、亀、白鳥、竜の形をした諏訪湖の遊覧船くらい。「貿易量(重量ベース)の99・7%が船で運ばれる」と言葉で教わっただけでは、記憶に残らないし興味も湧かないが、このように実際の船を見て、その迫力を感じ、餅まきなどのイベントの楽しさなども加わると、海上輸送などへの関心が高まりそうだと感じた。

 海運、造船業界を巡る足元の事業環境は決して良くないが、新興国の経済成長などにより海上輸送需要は中長期的に増える。国際競争にさらされるほか、市況動向など不安定な要素が多く難しい事業に見えるが、それを上回る魅力がある。小さい頃に、このような進水式で海事産業に触れることは、その魅力の一端を伝える良い機会だとしみじみ感じた。