2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年07月29日デイリー版2面

国内船主の今】(176):適合油規制でオペを選べず/7月、魔の用船更改

 7月下旬。西日本のとある地方都市。

 船主関係者が口を開く。

 「LNG(液化天然ガス)船の保有なんてハードルが高すぎる。われわれにとっては中古バルカーの保有で十分だ」(中手船主)

■老齢バルカー保有

 大手船主がLNG船の保有で償却資産をがっちり確保するのに対し、中小船主の多くは中古バルカーの保有に乗り出している。

 いや、乗り出しているといっては語弊がある。正確には「老齢バルカーの売却でキャッシュを確保したい海外オペレーター(運航船社)と船舶融資を実行したい中小金融機関の呉越同舟でしかない」(海運ブローカー)。

 どういうことか。

 商社関係者が話す。

 「海外ドライ船社の中には急速に経営が悪化している会社がある。こうした海外オペは既に日本船主、リース会社に用船料の減額を実施済み。バラ色の業績回復を説明するが、足元でやっていることは老齢バルカーでさえ手放せず、BBC(裸用船)で再用船している状況だ」(船舶部)

 本来、減価償却が終了した老齢バルカーは「生き船売船」、もしくは「スクラップ(解撤)」処分するのが王道。船齢20年に近づく外航船を運航するのは船舶管理や安全輸送上も問題がある。

 今、足元で発生している状況は、こうした老齢船を日本船主に売却、それを再用船して運航を継続しているというものだ。

 本来、売船益で得たキャッシュは新造船に再投資する。しかし、それができずに一般管理費やランニングコストに回さざるを得ないのが海外オペの厳しい台所事情を反映している。

 地方銀行関係者が話す。

 「こうした海外オペのバルカーの保有に乗り出しているのは、内航船などを保有している中小船主が多い。海外オペも1隻では飽き足らず、ロットで仕組み替えを実施するケースさえある」(船舶融資担当者)

■船主、逃げ道なし

 「このタイミングで契約更改期を迎える船主がいるとすれば、読みが甘いとしか言えない」

 新造船、中古船市場ともにさえない状況にもかかわらず、商社船舶部の営業マンが勢い良く言い放った。

 それもそのはず。足元で用船契約の更改期を迎えるオペ、船主の仲介は「継続」が圧倒的に多く、他のオペを探さなくても仲介手数料が入ってくるからだ。

 どういうことか。

 当事者である商社マンが説明する。

 「例えば7月で用船契約満了を迎えるオペ-船主間のバルカーがあるとする。ここで船主が契約を更改せず、新たなオペを探すのは非常にリスキーだ。市況は多少上がっているものの、適合油への切り替えを考えると、新たなオペがどんな要求するか、それの方がよほど怖い」(船舶部)

 邦船オペに用船貸し出ししていた船主がバルカーを引き上げ、新たに用船料が上乗せされる海外オペと新規用船契約を結んだとする。用船料の上乗せはプラス材料。しかし、2020年1月に切り替えられる適合油問題をどうするのか。

 タンククリーニングを完全にしろ、適合油は指定場所で詰め、さらにはスクラバー(排ガス浄化装置)を搭載しろという要求さえ想定できる。

 規制が切り替わるタイミングでオペを変更するのは相当なリスクを伴う。

 海運ブローカーが続ける。

 「昔から中国の旧正月前やクリスマス前後のデリバリー(引き渡し)、夏枯れの7月に用船契約が終了するような契約を船主は避けてきた。しかし、最近はこうしたタイミングが分からず、わざわざ自分が不利になるかもしれないタイミングで契約してしまう船主もいる」(東京拠点の海運ブローカー)

 旧正月前、クリスマス前後、夏場はいずれも季節要因でドライ市況が下がる時期。足元でオペと契約更改期を迎えている船主は当然、オペとの継続を希望している。

 ただし、オペも人の子。他に逃げ道のない船主の足元を見て、オペに有利な形で契約更改に臨んでいるのは言うまでもない。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載