2019 日本コンテナ航路一覧
電子版6つのNEW top01
 印刷 2019年07月22日デイリー版2面

国内船主の今】(175):解撤促進政策待望論/船主、造船の我慢比べ

 「西日本に拠点を置く造船所が中型バルカーをロット(複数隻)で受注したらしい」

 梅雨空の続く東京都心。7月第3週に入り、最初に入ってきた情報は造船所の日本船主からの受注案件だった。

 商社関係者が話す。

 「足元では造船所と日本船主の我慢比べが続いている。造船所は2021年の船台が埋まらず、2年を切りそうな手持ち工事量に焦っている。一方、日本船主も昨年あたりに売船した船舶の利益を再投資したい。償却資産の確保のために新造船を発注したいが、船価が下がらない」(船舶部)

■10月まで待てるか

 日本船主と造船所との我慢比べ。

 これには邦船オペレーター(運航船社)の動静も大いに関連してくる。

 海運ブローカーが話す。

 「邦船オペがここにきて、9月以降、ドライ、タンカー市況ともに上昇に転じると指摘し始めた。理由はドライが燃料油の入れ替えに伴う船舶の一時停止、タンカーは石油製品の荷動き増を前提にするものだ」(不定期船ブローカー)

 足元でドライ市況が上昇しているのは、ブラジルや豪州の鉄鉱石の再出荷が始まり太平洋に向かうバルカーが増加。一時的に大西洋の船腹が不足しているというもの。

 「低すぎたドライ市況の揺り戻しが来ているだけで、船腹過剰という根本問題は解決していない」(邦船オペ不定期船担当者)

 商社関係者が指摘する我慢比べとはもっと根本的なものだ。

 造船所関係者が指摘する。

 「要は造船所が10月まで新造船価格を下げないで我慢できるか、ということ。邦船オペの指摘する通り、9月から市況が回復すれば現在の船価をベースに商談に臨める。しかし、足元で船価を下げれば新造船価格が一気に値崩れする懸念がある」(中手造船所)

■行政が救いの手を

 日本と異なり欧州は夏真っ盛り。気温の上昇に伴いギリシャ船主、欧州オペもバケーション(夏季休暇)に入った。

 「海運市況はともかく、海外勢の新造船商談は当面、お預けだろう」(商社船舶部)

 中国は国有系造船所2社の合併による強大化、韓国の造船所は政府系金融の流入でメガコンテナ船、LNG(液化天然ガス)船の連続受注に入っている。

 日本造船所は今後、中国や韓国造船とどう戦えばいいのか。

 ここにきて日本海事クラスターの各方面から管轄官庁の国土交通省や業界団体への救済を求める声が非公式に上がっている。

 どういうことか。

 海運ブローカーが話す。

 「例えば国土交通省が主導でスクラップ(解撤)を促進するルールを作れないか。燃費効率の悪い既存船をスクラップ処分した日本船主や邦船オペに対し、新造船の発注の際の融資を低利で借りられる仕組みを作る。こうしたインセンティブ(誘導)があれば、既存船を処分し、新造船を日本造船所に発注する船主は増えてくる」

 言うは易(やす)いが行うは難し。

 内航船のスクラップ&ビルドを地でいくようなシステムに「自由競争を疎外する」という反論があるのは当然だ。

 それでも、造船業界から政府の支援を求める声が日ごとに増えているのは確か。

 商社関係者が代弁する。

 「BBC(裸用船)もだめ、LNG船やメガコンテナ船も保有できないとなれば、いよいよ日本の中小船主は償却資産を確保できない。税金を支払って、本来の目的である市場価値からみた新造船投資に戻れる。しかし、それには何らかのインセンティブが必要だ」(船舶部)

 日本船主、邦船オペともに新造船投資に踏み切る最後の一歩が出ない。

 そこを埋めるには、行政主導のスクラップ促進、代替建造のインセンティブを考えなければならない。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載