2019 日本コンテナ航路一覧
電子版6つのNEW top01
 印刷 2019年07月18日デイリー版2面

Close upこの人】三井海洋開発社長に就任した香西勇治氏/追い風の時こそ次の仕込み

三井海洋開発社長・香西勇治氏
三井海洋開発社長・香西勇治氏

 「三井海洋開発(MODEC)はチャレンジ・スピリットがある会社。その良さをいかし、さらに魅力ある会社に発展させることが使命だ」

 FPSO(浮体式石油生産・貯蔵・積み出し設備)の設計・建造とチャーター事業(リース、運転、保守点検などのオペレーション)分野で、蘭SBMオフショアと共に世界2強で、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)グループのMODEC社長に就任した。プロジェクトの大型化などで企業規模が拡大する中、市況変動などボラティリティー(変動性)に左右されることなく、持続的に成長して安定的に利益を生み出し続けることができる会社の実現を目指す。

 具体策は、2018-20年の中期経営計画を着実に実行すること。

 「中計では、FPSOの設計から操業までの全期間を通して、社会、顧客、パートナー、株主などのステークホルダーに提供する価値『ライフサイクルバリュー』を最大化することを盛り込んだ。ライフサイクル内ではもっと価値を高めることができる部分がまだある」と語る。

 足元のFPSO事業の環境について、原油価格指標の米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が1バレル=60ドル前後まで回復したほか、5月に米ヒューストン市で開催されたオフショア展示会で接した顧客である石油会社の反応を踏まえ、「追い風であると感じている」。

 MODECは今年に入り、既にブラジル国営石油会社ペトロブラスからFPSO1隻の受注(設計・建造とチャーター契約)を内定。足元でも有望案件があり、今年は2件以上の成約を見込む。FPSOとしては、新規受注は15、16年とゼロだったものの、17年に約3年ぶりに成約。年間2隻前後ペースの受注を継続している。

 「年末から来年早々にかけても、発注に向けて顧客による投資判断がなされる案件が3件ある」など事業環境は上向いている。

 一方で、石油などの化石燃料に対して世間が敏感になっているほか、「今はマーケットが良くても、事業がフォーカスされている。次の仕込みもしなければいけない」と気を引き締める。

 「次の仕込み」の対象となるのは天然ガス、再生可能エネルギー。天然ガスに関しては、FLNG(浮体式LNG〈液化天然ガス〉生産・貯蔵設備)の基本設計を受注した実績があるほか、子会社の米SOFECがFLNG向け係留設備を複数件手掛けるなど、事業本格化に向け準備を進める。

 LNGの再ガス化に加え、ガスでの発電や海水の淡水化も可能なFSRWP(浮体式LNG貯蔵再ガス化発電淡水化設備)も開発済みだ。本土からの送電線網が整備されていない島しょ部を有する国や、電力需要が高く耕作地向けの水が必要な開発途上国などで営業活動を展開する。

 再生可能エネルギーに関しては、洋上風力発電分野で風車を載せる浮体と係留部分を中心に手掛ける方針。浮体は、TLP(緊張係留式プラットホーム)と半潜水式のセミサブマーシブルの2タイプの開発を推進、来年以降には実機での試験も行っていく計画だ。

 主力事業のFPSO分野では、求められる生産能力の拡大などで従来の中古VLCC(大型原油タンカー)の改造では対応が難しくなっていることも踏まえ、新造も視野に入れる。標準化した新たなコンセプトのFPSO用船体の開発を進めており、顧客の多様なニーズに対応する。基本設計は完了しており、早ければ年内の初受注を見込む。船体は中国などアジアでの建造を想定する。

 大学時代からバドミントンに20年のめり込んだ。「夏場の練習は特に厳しい。羽根が軽いため風の影響を受けないようにするほか、外の光を避けるため、窓を閉め暗幕を引かないといけない」と思い出を語る。ラケットで打たれた羽根は初速は早いが、終速が大幅に落ちる。「羽根が床に着くまで諦めてはいけない。勝負は最後まで分からないのはビジネスも一緒」と笑う。

 顧客、メーカー関係者、同僚ら立場は違うものの、その時々に出会った「人と人のつながり」の重要性を身をもって知り、それを表す「一期一会」を座右の銘としている。(五味宜範)

 こうざい・ゆうじ 82(昭和57)年名古屋工業大卒、三井造船(現三井E&Sホールディングス)入社。執行役員企画本部副本部長などを経て、18年6月取締役。三井海洋開発では18年3月に取締役を経て、今年3月から現職。岡山県出身、59歳。