2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年07月17日デイリー版1面

MariTech×ShipDC】(3):大坪新一郎・国土交通省海事局長/業界に横串通し競争力強化(その1)

国土交通省海事局長・大坪新一郎氏
国土交通省海事局長・大坪新一郎氏

■自動運航指針に反映

 --国土交通省のデジタル化に関する取り組みを聞きたい。

 「ⅰ-Shipping(アイ・シッピング)」という研究開発補助事業を実施している。対象分野としてオペレーション(運航分野)のほか、プロダクション(製造分野)などがあり、公募型事業として先進的な取り組みを支援している。オペレーションに関しては船体のヘルスモニタリング(状態監視)、有人自律運航の操船支援など。プロダクションについては、工場の見える化、建造時のデジタルツイン(船体構造などの仮想空間での再現)などに関して技術開発をサポートしている。いわゆるトップランナー支援で、先んじてやろうとする企業を応援することがわれわれの基本的なスタンスだ」

 「自動運航については実証事業も行っており、大島造船所が建造した完全バッテリー駆動船『e-Oshima』もその一つ。この事業を通じて、われわれもそのノウハウを取り入れ、自動運航のガイドライン作成などに反映させようと考えている」

■遠隔検査導入も

 --海事産業ではデジタル化をどのように進めるべきか。

 「船舶は、完成後の寿命が長い。造船所では受注から詳細設計、製造、竣工まで2-3年、竣工後の使用期間も20-30年に達する。デジタルデータは、その間ずっと収集され分析される。そこが普通の工業製品と全く異なる。それから、海事産業にはプレーヤーが多い。一つの船について造船所、舶用機器メーカー、船社、検査機関、保険、行政など多数が長期間にわたり関わる上、その相互の機能が複雑。デジタル化は、あらゆる機能に出てくる。私の思いとしては、プレーヤー、業界間に横串をきちんと通して、デジタル化を進めていきたい。それによって日本の海事クラスター全体の競争力を上げ、強くしたい」

 「海事産業のデジタル化は、一部だけ行えば良いというものではないと考える。例えば造船所に関しては、数十万点に達する部品の管理や、工場の見える化、設計と現場のリンクなどでデジタル化が貢献する。設計と現場のリンクで実証中のこととして、建造中の新造船で設計変更された場合、作業員が事務所に戻り図面を見てまた現場に行き作業を再開するというのではなく、現場に無線でつながったタブレットがあり、設計変更した情報がその都度現場でも把握できるようになることで、生産性の向上につながる」

 「寿命が長い船舶では、運航中のヘルスモニタリングも重要だが、全く異なる複数の『ヘルス』がある。『ⅰ-Shipping(オペレーション)』の中で、既に取り組んでいることに船体構造のヘルスモニタリングがある。波浪外力がかかり、船体に過大なゆがみや応力が出ていないかをモニタリングする。これを常にやっていると、折損事故などは起きない。もう一つは、船員の健康管理。遠隔での健康診断に加えて、当直に就いている時にモニタリングして急な体調悪化がないか確認することなどもできる。さらに、運航中に各種機器のデータを取りためることで、従来の定期的なメンテナンスから、状況に応じたメンテナンスも実現可能だ」

 「舶用メーカーでは、既に日本船舶品質管理協会が取り組んでいるが、ICタグによる部品の管理や、社内検査のデジタル化など、生産工程の効率化につながる。このほか、造船所と舶用機器メーカーのやりとりもデジタル情報でできることになる。以前、造船所からの発注作業などを電子化する『造舶ウェブ』という取り組みがあったが、当時の技術では、見積もり・発注・図面承認といった『手続き』作業をウェブ上で行うことはできても、設計・生産工程やアフターサービスの分野まで含めた広がりは持てなかった。今は状況が変わった。造船のサプライチェーン全体の効率化ができるようになる」

 「行政側では、検査官が造船所などに行かなくても現場からのカメラの映像をデジタルデータでチェックする遠隔検査も導入しつつあり、8月から全国の運輸局でできるようにする。建造・製造中の品質管理データを検査に使えるようにすることなども検討している。このほか証書の電子化も進めている」

 「自動運航に関しては、『e-Oshima』も含めて、さまざまな取り組みが行われている。このように、建造・運航の長い時間軸と複雑なプレーヤー間の機能のあらゆるところでデジタル化は進行する。どれが重要で、どれが重要でないかということではなく、できることは全部やり、それによって製造コスト削減、短納期化、船舶の保守整備費や不稼働期間の抑制など造船、海運のサービス差別化などにつなげる。こうして、日本の海事産業全体を強くする」

■2面に続く

 おおつぼ・しんいちろう 87(昭和62)年東大院了、運輸省(現国土交通省)入省。ハーバード大院、東大博士(環境学)。13年海事局船舶産業課長、17年海事局次長を経て、19年7月から現職。福岡県出身、56歳。