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 印刷 2019年07月12日デイリー版1面

中東沖の有志連合構想/どうなる「護衛対象」。定義・範囲、政府対応を注視

 トランプ米政権が日本を含む関係国に、中東沖を航行する民間商船の護衛のために有志連合の結成を呼び掛けている動きを受け、海運業界からは護衛対象の定義・範囲に注目が集まっている。米国は各国に「自国の船舶」を守ることを要請しているが、仮に日本から自衛隊が派遣される場合、護衛対象が日本籍船になるのか、外国籍船(FOC〈便宜置籍〉船)も含めた日本商船隊全体になるのか-でその規模が大きく変わってくる。海運関係者は、「商船は船籍、保有、運航管理でそれぞれ国籍が異なるケースが多い。何をもって、自国の船と言えるのか」とし、日本政府の対応を注視している。

 米CNNなどによると、今回米国が志向する有志連合は、警戒活動を指揮する米国艦船の周辺で、参加国がその米艦船や自国の民間船舶の護衛に当たる仕組みのようだ。ただ、それ以上の具体的な情報はなく不透明な部分が多い。

 一方で、すでにペルシャ湾では、英国軍が自国籍船をエスコートするケースが表面化。邦船社運航の英国第二船籍のマン島籍船が護衛を受ける事態も発生したという。

 今回浮上している有志連合に日本が参加する場合、自衛隊の派遣が求められる可能性が高いが、自国の船をどう定義付けるかで、護衛する規模・範囲が大きく変わってくる。

 国土交通省の統計などによると、日本商船隊は約2500隻。そのうち、日本籍船は約260隻、緊急時の日本籍へのフラッグ・バック(転籍)を前提とする外国籍船の「準日本籍船」が64隻。それ以外の純粋な外国籍船が約2100隻を占める。

 護衛対象が日本籍船および準日本籍船に限定されれば、カバーできるのは日本商船隊の13%程度にとどまる。

 船員についても同様だ。

 日本商船隊に乗り組む外国人船員は約4万5000人とされる。一方、外航日本人船員は約2100人で、日本商船隊の大半を外国人船員が占める。

 6月に中東沖で被弾した「コクカ・カレイジャス」も日本の国華産業(東京都千代田区)が運航していたが、船籍はパナマで乗組員はフィリピン人が占めた。

■結成は困難との見方も

 一方、2009年以降から本格化したソマリア沖アデン湾の海賊対策では、自衛隊は海賊対処法に基づき、外国船社が運航する外国籍船であっても護衛艦によるエスコート業務を展開。今日までに邦船社関係船と合わせ、3800隻以上を護衛してきた。

 海賊対策では13年以降、日本も有志連合(第151合同任務部隊〈CTF151〉)に参画し、加盟国持ち回りでの司令官の派遣や、護衛艦による商船のエスコート、上空からの警戒監視などで実績を積み重ねてきた。

 こうした経験を生かし、今回浮上している中東沖での有志連合に関しても同様の枠組みが構築できそうだが、海賊問題など海洋安全保障問題に詳しい獨協大学の竹田いさみ教授は「結成の難易度は高いのではないか」と話す。

 竹田教授は「海賊対策では敵がはっきりしているが、今議論されている中東沖の事案では対象が不明確だ。5、6月のタンカー攻撃事件について、米国はイランの関与を指摘しているが、証拠はない。目的や対象が不明確なままに、参加するというのは既存の有志連合のケースを踏まえると、難しい」と語る。

 海賊対処法のほか、自衛隊を中東沖へ派遣するには、安全保障関連法、海上警備行動などが想定される。それら現行法での対応が不可能な場合、新たに特別措置法を制定する必要もある。