シップオーナーズ・フォーラム2019
 印刷 2019年07月12日デイリー版2面

MariTech 海事未来図】日本郵船・丸山専務/デジタル化「アナログと両輪」。ITセミナーで講演

講演する丸山専務
講演する丸山専務

 日本郵船の丸山英聡専務経営委員技術本部長は10日、日経BP主催のITセミナーでデジタライゼーションに関して特別講演をした。丸山氏はSIMS(シップインフォメーションマネジメントシステム)を中心とした取り組みを解説。「デジタルとアナログは車の両輪。情報処理量では(デジタルが優位に立ち)勝負がついているが、処理されたデータを分析する際にはアナログ的思考がないと実社会で活用できない。両者は対立するものではなく、アナログ的な観点を忘れてはならない」と強調した。

 郵船は航行中のトラブルを未然に防ぐ船舶IoT(モノのインターネット化)の活用事例が評価され、優れたIT活用事例を毎年表彰する「ITジャパンアワード2019」でグランプリに選出された。

 丸山氏は船舶のコモディティー(一般商品)化や荷主のグローバル化など海運業界の環境変化を説明。郵船の中に蓄積されたノウハウ・暗黙知などをデジタル化し、競争力の源泉とすることを、デジタル化の基本スタンスとした。

 デジタル化の先進的な取り組みとして、船舶からデータを取得し、陸上で分析・フィードバックする「SIMS」の事例を挙げた。安全・効率運航に加え、状態基準保全(CBM)を可能とし、環境問題にも寄与する。

 2014年からは船舶通信のブロードバンド化に伴い、より詳細に運航状態を把握できる「SIMS2」に移行している。収集された膨大なデータをデジタル処理し、独自開発のビューアやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどで可視化。正確な状況認識、迅速な意思決定につなげる。

 丸山氏はSIMSの発展系として、エッジコンピューティング(デバイスそのものに処理機能を持たせ、総通信量を抑制する技術)や、AI(人工知能)なども導入していく方針を示した。

 丸山氏はSIMS導入で最も苦労した工程として「IoTデータの名称標準化」を挙げた。「造船所、舶用メーカーごとに(部品など)チャンネルの名称が異なり、その標準化がクリティカルパス(プロジェクト全体で最も時間がかかる作業)だった。これまで蓄積した連続知を生かすためにも、今までのデータにひも付けた形で、担当者が地道に標準化していった」と説明した。

 また、既存の紙ベースの取り組みをデジタルに置き換えるデジタライゼーションにとどまらず、デジタルトランスフォーメーション(DX)も推進。SIMSなどデジタルのインフラ構築に加え、CBMに代表される既存ビジネスプロセスを効率化・高度化するDX1・0、船上電子決済などのデジタル化で新たなビジネスモデルを創造するDX2・0といった、より高度な取り組みを進める。