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 印刷 2019年07月11日デイリー版2面

インタビュー 令和の舵取り】国土交通省海事局長・大坪新一郎氏/海運・造船、勝利の時代に(その2)

「日本の自動運航システムは欧州にも負けていない」
「日本の自動運航システムは欧州にも負けていない」

■範囲広い「自動」

 --注目度の高い自動運航船の開発をどう進めていくか。

 「国土交通省では自動運航船の実用化に向けたロードマップ(行程表)を策定し、2025年までに船員の承認の下で衝突の危険性のある船を自動操船によって回避できる技術などを可能にする『フェーズ2』の実現を目指している」

 「自動車の自動運転と比べると、船舶は『自動』を目指すべき範囲が広い。自動車で乗員が果たす機能は単に運転(操縦)だけとなるが、船舶は操縦に加えてエンジンに代表される機器のメンテナンスや、離着桟や荷役などの作業も含まれる。単に操縦している『機体』ではなく、24時間連続で稼働しているプラントという性質があるのが大きな違いだ」

 「現在、海事局の予算で自動運航船の実証事業を行っているところだ。『e-Oshima』も含めて開発・実証中の自動運航システムは欧州にも負けていないと思っている。だが、ボート、漁具・漁網などの小さな障害物をどう認識していくかという課題もある」

 --造船分野は。

 「中国や韓国で造船所の再編が大規模に起こり、かつ莫大(ばくだい)な額の公的支援がつぎ込まれて企業の規模が大きくなる中、日本の造船業がどう対抗していくか、なかなか難しいものがある。海事局では『海事産業将来像検討会』を設置したが、この中で他分野の知恵を生かした議論を進め、これまでよりも一歩踏み込んだ取り組みを推進していきたい」

 「異なるプレーヤーを巻き込んでのデジタル化の推進についてはもちろんだが、主要な船種の分野で造船所同士が設計や調達、生産をシェアすることを進めるべきだ。ニッチ分野では、各造船所が既に確立された顧客を持っているが、その中でどうやって製品の魅力をさらに高めるかなどの戦略もある。海上技術安全研究所などの公的機関のリソースなども使いながら、日本の造船業がどう競争力を高めていけるか、考えていかないといけない」

■スマホで情報収集

 --内航業界の今後の在り方については。

 「内航業界への対応はある意味、船員対策とイコールといえるだろう。日本の人口、特に若年層が減少していく中、内航船での働き方そのものを見直さないと船員確保もままならない。交通政策審議会海事分科会の船員部会では、船員の心身の健康確保のための方策について議論している。メンタルヘルス対策や健康管理のサポートについては、今月に方向性を取りまとめる予定だ」

 「これと並行して、労働実態調査を継続的に実施している。新しい取り組みとして、スマートフォンを活用して船員からじかに船内の労働作業時間などの情報を収集している。この結果を基に、長時間労働の是正や乗船期間、休暇取得の在り方といった働き方に関する議論を進め、来年の夏までに取りまとめたい」

 「こうした働き方改革を実施する上で、荷主の理解と協力が不可欠となる。荷主に関わることは海事分科会基本政策部会で議論している。船員と政策の両部会で内航業界の在り方を検討していく」

 「船員育成については海技教育機構(JMETS)が重要な役割を担っているが、質の高い船員教育をどのように提供していくか、検討していかなければならない。JMETSの経費は海事局予算の7割以上を占めるが、厳しい財政状況の中で増額は難しく、練習船の代替など課題も山積している」

 「近年は、JMETS以外でも水産・海洋系高校出身の内航船員も増えている。こうした高校を所管する文部科学省と連携し、どのようなスキルを持つ船員がどれだけ必要なのか、その全体ビジョンを含めて、育成の在り方についても議論していきたい」