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 印刷 2019年07月11日デイリー版1面

日本郵船/JFE向けケープ発注。JMU新船型、基幹船隊更新を促進

 日本郵船はJFEスチールと鉄鋼原料の長期輸送契約を結び、同契約に投入する21万1000重量トン型ケープサイズバルカー1隻をジャパンマリンユナイテッド(JMU)に発注した。新造船は、新共通構造規則(H-CSR)や各種環境規制に適応しながら、載貨重量増加と燃費低減を実現。JMU新開発の次世代省エネ型ケープの1番船となる。郵船のJFE向け専用船の新造整備は、竣工ベースで7年ぶり。新船型の輸送効率の高さが、JFEの基幹船隊の更新を後押ししたとみられる。

 郵船はJFEと長期の連続航海用船契約を、JMUと211型バルカーの建造契約をそれぞれ締結した。郵船とJMUがそれぞれ10日発表した。新造船は船主起用の長期用船として整備する。竣工は2021年の予定で、既存のJFE向け専用船の代替で投入する。

 関係者によると、JFEが郵船と長期契約を結んで原料輸送に投入している専用船のリプレースを実施するのは、14年竣工の209型バルカー以来。JFEは近年、原料需要の変動に柔軟に対応するため、既存の長期契約を期限が切れるタイミングで短中期契約に置き替え、長期契約船隊を絞ってきた。

 今回、基幹船隊の更新再開に踏み切ったトリガーの一つに、JMUの輸送効率の高い新船型の開発があったとみられる。

 JMUの新船型は、H-CSRやNOX(窒素酸化物)3次規制などの環境規制にフル適応した「Jシリーズ」のケープサイズバルカー「J211BC」。最大の特徴は、最新の各種規制に対応しつつ、積み高の増加と燃費の改善を実現している点だ。

 H-CSRとNOX3次規制は従来船型に適用すると船殻重量が増加するため、載貨重量が減少し燃費も悪化するのが通常。これをJMUは、船型の見直し・最適化と省エネ付加物の採用などを行うことで、載貨重量と燃費を逆に改善することに成功。「J211BC」は主要寸法を13年建造の20万9000重量トン型「G209BC」から変更せず、輸送効率を向上させた。

 「J211BC」は独自の省エネデバイスを複数搭載し、推進性能を大幅に向上させて燃費削減を達成。さらに、波浪中の抵抗増加を抑える「LEADGE-Bow(レッジバウ)」と呼ばれる船首形状や、風圧抵抗を低減させる低風圧居住区などを採用し、実海域性能を向上させている。

 また20年1月から始まるSOX(硫黄酸化物)排出規制に対応し、「Jシリーズ」として初めてスクラバー(排ガス浄化装置)を標準搭載。20年以降の契約船に適用されるEEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ2の規制値も、先取りでクリアできる見込み。

 さらにJFEが14年に世界で初めて開発した、石炭カーゴホールド内の腐食を抑制する高耐食性厚鋼板「JFE-SIP-CC」を、本船の外板、倉内肋骨、内底板のそれぞれ一部に採用する。

■「J211BC」の主要目 全長約299・9メートル▽幅50メートル▽深さ25メートル▽喫水18・4メートル▽約211、000重量トン▽108、900総トン▽航海速力14・5ノット▽定員25人▽船級NK

 【解説】211型BC「統合効果の象徴」

 JMUは今回、ユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド(IHIMU)の合併による13年1月の発足後、初めて開発したケープサイズバルカーの新設計で初受注を果たした。

 ユニバーサル造船は02年10月に発足した日立造船とNKKの造船統合会社で、JMUは日立造船、NKK、IHIMUの旧3社が母体。今回受注した「J211BC」は、その3社それぞれの独自技術が結集した「JMUの統合効果の象徴」(JMU関係者、以下同)ともいえる船型。機能の異なる旧3社の省エネ付加物を組み合わせて搭載したからだ。

 船尾船体後部の複雑な水の流れをプロペラに整流して導き、プロペラ効率を向上させる「SSD(スーパー・ストリーム・ダクト)」は、旧日立造船による開発。プロペラ後方の捨てられる回転流のエネルギーを回収する「SURF-BULB(サーフ・バルブ)」は、旧NKKのデバイスだ。

 これに加えて今回、「J211BC」の前船型である「G209BC」に搭載していなかった旧IHIMU製の「ALV-Fin」を新たに導入した。「ALV-Fin」は船体後部のプロペラ前方に搭載する板状の付加物で、水の抵抗を減らせる。「J211BC」はこれら旧3社の独自の省エネデバイスの搭載により、燃費を一層改善させた。

 02年のユニバーサル造船の発足以来、同社とIHIMUは13年にJMUとして統合するまで、船型開発で競い合ってきた歴史がある。「各社が限界までやり尽くしたはずだった」(関係者)ケープサイズの船型効率化が今回、統合による技術の融合でもう一段進む。

 JMUの20万重量トン超級ケープサイズは00年代初頭、旧NKKが他の造船所に先駆けて開発した20万2000重量トン型が源流。同船型は、旧NKK(現JFEスチール)の福山・水島製鉄所に寄港する最適船型として開発されたことから、“瀬戸内マックス”と呼ばれた。

 JMUではこの202型を20万重量トン級ケープの第一世代と呼んでおり、ユニバーサル造船として03年以降に開発した207型が第二世代、205型が第三世代、209型が第四世代。今回の「J211BC」は第五世代に当たる。

 JMUは、H-CSRやNOX3次規制などの環境規制にフル適応した新船型を複数の船種で「Jシリーズ」のブランド名で展開。バルカーでは「J211BC」に先行してカムサマックスを開発・受注しており、ウルトラマックスも今後開発する計画だ。(松下優介)