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 印刷 2019年07月11日デイリー版1面

インタビュー 令和の舵取り】国土交通省海事局長・大坪新一郎氏/海運・造船、勝利の時代に(その1)

国土交通省海事局長・大坪新一郎氏
国土交通省海事局長・大坪新一郎氏

 2020年1月からのSOX(硫黄酸化物)規制への対応や、巨大化する海外造船会社への対抗策など、日本の海事クラスターを取り巻く環境は厳しさを増している。こうした中、IMO(国際海事機関)での国際交渉など、多岐にわたる海事分野で活躍してきた大坪新一郎氏が9日付で国土交通省海事局長に就任した。大坪新局長に今後の海事行政の舵取りなどについて聞いた。(聞き手 幡野武彦、船木正尋)

■健闘引き継ぐ

 --海事局長に就任した抱負は。

 「平成という時代を振り返ったとき、一部で『日本敗北の時代』だったという見方があるが、海運・造船に限って言えば、他産業と比較して健闘してきたと思っている。それをどうやって引き継いでいくか。大島造船所が建造した完全バッテリー駆動船『e-Oshima』の命名式で、『令和元年に生まれたこの船が、後日、海事産業勝利のアイコンと思えるようにしたい』とあいさつしたことがある。決して楽な道のりとは思っていないが、歴史を振り返ったとき、『(令和は海運・造船にとって)勝利の時代だった』と言われるように盛り上げていきたい」

 「日本の海事クラスターは海運、造船、舶用が一体となって成長することによって形成されてきたが、一般的に、4つの役割がある。一つは日本の貿易を支える経済安全保障、次に造船・舶用業界を中心とした地域経済や雇用への貢献、そして日本経済の血流としての国内物流および離島の生活維持を含めた旅客輸送、最後に国防や海上保安、防災のための艦艇建造や災害時緊急輸送-となる」

 「しかし、その日本の海事クラスターは今、ほころびが見えつつある。世界における日本経済の相対的な地位低下もあって、日系荷主企業のパワーが落ち、それが海運業にも影響している。また造船業にしても、政府の支援を受けた中国や韓国の造船所台頭に加え、過去の不況で新規採用を抑制したことで、今、油の乗り切った年代であるべき人的資源が細っている。お互いに余裕のなくなった海運と造船の関係性も変化している」

 「では、どう持ちこたえていくか。外航など海運業に対しては、諸外国とイコールフッティング(競争条件の均一化)に少しでも近づくべく海運税制などの維持・強化を図り競争条件を整えていきたい」

 「造船業などに対しては、i-Shippingなど技術開発支援や共同での船型開発の枠組みを提供していくことで底上げを図りたい。現在の厳しい市場環境に対して、魔法のように解決する手段は簡単に見つかるものではないが、長い時間軸の中で持続的に成長する効果のある施策を打ち出していきたい」

■適合油めど

 --SOX規制が来年1月から始まる。

 「国交省ではこれまで、SOX規制に向けたさまざまな準備を進めてきた。焦点である規制適合油についても、海運事業者にとって使いやすく、また石油業界の立場では安定的に生産・供給しやすい、全体最適解となる燃料油の性状を模索してなんとかめどを付けることができた」

 「次の段階として規制適合油を使った実船トライアルだが、6月下旬に内航貨物船4隻を対象にタンククリーニングしないで実際の運航と同じ形で実施した。硫黄分濃度の変化や混合により固形物が生じないことなどもチェックしたが、問題なく運航できた。今後は他の船種についても実施していく予定だ」

 「規制適合油の価格上昇は海運業界にとっては大きな影響を及ぼす。荷主企業の理解を得て、燃料油サーチャージ(割増金)などをお願いするようになると思う。まずは荷主企業への理解を得るための説明が必要だ。4月には経団連などと共に東京でシンポジウムを開いたほか、6月からは地方での説明会を開催している。今後も全国各地で説明会を開催する見込みだ」

(2面に続く)

 おおつぼ・しんいちろう 87(昭和62)年東大院修了、運輸省(現国土交通省)入省。ハーバード大修士、東大博士。16年6月大臣官房技術審議官(海事局担当)、17年7月海事局次長。19年7月から現職。福岡県出身、56歳。