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 印刷 2019年07月10日デイリー版1面

MariTech×ShipDC 海事未来図】(2):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)社会基盤センター・企画部デジタル連携推進グループ・グループリーダー・河野孝史氏/「トラスト」付与でPF支援

経済産業省商務情報政策局情報経済課課長補佐・河野孝史氏
経済産業省商務情報政策局情報経済課課長補佐・河野孝史氏

 (河野氏の取材時の所属は経済産業省商務情報政策局情報経済課課長補佐。今月1日付で現職)

■初の制度活用認定

 --経済産業省は先ごろ、国土交通省、総務省と共に、シップデータセンター(ShipDC)の「IoSオープンプラットフォーム(IoS-OP)」について、「公的データ提供要請制度」の活用を初めて認定した。

 「データ連携の動きは各業界であり、ビジネスとしての取り組みに対して政府としては原則関与すべきではないと考えている。ただ、協調領域での連携拡大により、産業全体の安全性や効率性が向上するのであれば、それを公共財的なものとして政府が支援する意味はある。本制度による認定は、データプラットフォーム(PF)にとっても、公的データの提供要請が容易になるなどメリットが大きい」

 「国の役割として、補助金などを通じた資金的支援だけでなく『トラスト』(信頼性)の付与が重要になってきた。データ共有は、多くのステークホルダーからいかに多様なデータを継続的に収集できるかがポイント。セキュリティー対策も含め、信頼性の面で国が手助けできる部分は大きい」

 「データ共有が目的化すると動かない。集めたデータをどう活用するかについて、ビジョンと意欲を持ったプレーヤーが真ん中にいると、大きく進展する。ShipDCのIoS-OPはまさにその事例で、(新制度による認証の)第1号案件にふさわしいという判断だ」

 --データ連携では、経産省は2017年に打ち出した新戦略「コネクテッド・インダストリーズ(CI)」を推進している。CIはさまざまなつながりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指している。

 「日本産業界の特長として、技術に対する強い信頼がある。他方、その技術を生かした事業化・サービス化が勝負となっている第四次産業革命、ソサイエティ5・0(政府が提唱する、情報社会に続く新しい社会)においては、新しい潮流に対応できていない面もある。変化への対応として経産省が示した産業政策がCIだ。(AI〈人工知能〉などを通じ)人間が介在せず、さまざまな処理が行われる世界で、多様なステークホルダーとどのように組んで、どのような付加価値を創出できるかが問われている」

 「日本産業界は伝統的に巨大コングロマリット(複合企業)が併存している。その内部での効率性は高いが、一方で、競合他社間の協力・連携や新たな技術・プレーヤーの柔軟な取り込みについては、諸外国に比較してやや不得手な領域だ。ただ、幾つかの大企業でもトップレベルでは他社との協調領域を特定しデータ連携することへの問題意識は高い。国として、現場レベルも腹落ちする形での環境を整備していく必要がある」

■つながるデータ

 --CIの観点から、IoS-OPをどう評価するか。

 「極めて先進的な取り組みだ。海運という本質的なグローバルな産業で、日本国内の他産業に比べて海外の動きをダイレクトに受け止めやすいという特徴が一因とみている。また、造船では時には1隻当たり数十万点という部品が必要であるなど、中小企業まで含めて極めて産業の裾野が広い」

 「さらに船を動かす船社、部品を造る造船業、荷物を持つ荷主等々と、さまざまなステークホルダーが関与している。国際競争にさらされ、さまざまなプレーヤーがいるこの業界で、データを使って新しい取り組みをしたいとの発意が生まれるのはある意味必然だったのかもしれないが、それをここまで仕上げていった関係者の尽力に敬意を表する」

 --CI政策の次の課題は。

 「スケーラビリティー(拡張性)とサステナビリティー(持続性)の確保だ。IoS-OPのような先進的な事例への支援も重要だが、経産省としては、次々に出てくる社会課題に継続的に対応していかなくてはいけない。自律的、持続的に市場の中でデータ連携が進む仕組みをどう整備するか。また、合わせて信頼性・安全性の確保も重要であり、その両立をどう図るかという基本的な考え方を整理していきたい」

 「日本には優れた技術を個別に持ったプレーヤーが多いが、全体の設計図を描き、多様なプレーヤー間の連携を円滑に主導できるプレーヤーが不足。こうした考え方、プロセスについて、分野ごとのケーススタディー支援・発信だけでなく、一段階抽象化した形で汎用(はんよう)的なものにしていく。『この手順にのっとっていれば、ある領域においてデータがつながり、必要な安全性基準もクリアできる』というようなレベルまでもっていきたい。海外のプレーヤーが決めた設計図の中で、日本が部品を供給する、というような下請け的なポジションではなく、全体像を設計する力を日本が持ち、それが起点となって日本の産業競争力が持続的に強化されていくための方法論を考えていきたい」(週1回掲載)

 こうの・たかし 05(平成17)年東大工卒。07年東大院新領域創成科学研究科卒。経済産業省入省。16年商務情報政策局情報経済課課長補佐。19年7月から現職。37歳。