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 印刷 2019年07月08日デイリー版4面

記者の視点】鈴木隆史:中東緊迫化に見る海運の重要性/業界挙げて認知度向上を

 先月、中東のホルムズ海峡付近で発生した日本のタンカーなど2隻に対する攻撃事件。ちょうど安倍晋三首相のイラン訪問のタイミングとも重なり、海運業界内外を問わず大きく注目された。

 炎上するプロダクト船「フロント・アルテア」、被弾したケミカルタンカー「コクカ・カレイジャス」の写真は一般報道でも大きく取り上げられ、視覚的にも被害の大きさが伝わった。

 中東では5月にもアラブ首長国連邦(UAE)・フジャイラ沖でサウジアラビアのタンカーなどが襲撃されたばかりで、2カ月連続の事件発生に緊張は急激に高まった。

 邦船大手は中東周辺に配船する商船に対し、危険区域を設定し避航や見張り・監視の強化などを指示。VLCC(大型原油タンカー)などに限定することなく、全船種を対象とし、安全確保に尽力した。

 中東情勢の緊迫化を背景に、船舶戦争保険料率も高騰、VLCCのスポット用船市場は配船リスクの高まりから成約が数件にとどまり一時閑散とするなど、多方面に影響が及んだ。

 ホルムズ海峡を含む中東沖はエネルギー資源輸送の大動脈。日本の原油の中東依存度は約9割と高く、避けては通れない海上輸送の要衝だ。

 「戦争状態にでもならない限り、運航は継続する」

 事件後、複数の邦船社のタンカー担当者が異口同音に語っていたが、それだけ重要な海域であることが改めてうかがい知れた。

 このタイミングで海事クラスター外の通信業界の方に取材する機会があったが、同氏は「事件の報道に触れ、海運業がいかに重要な産業であるかと認識させられた。日本のシーレーン、インフラ中のインフラを支えるものだとは特段、意識していなかった」と話してくれた。

 皮肉なことに海運業、エネルギー資源輸送を脅かす事件が発生したことで、海運業の重要性が認識された格好だ。改めて業界の認知度の低さを感じた。

 こうした危険な事件が起こって初めて重要性が認識されるのももどかしいし、曲がりなりにも業界専門紙として海運業界の片隅に身を置く者として、どこか寂しい気がした。

 「海の日」が近づく中で、業界を挙げて改めて海運業の重要性などに関するPR、広報活動を考える必要があるのではないか。船舶、船員の安全が脅かされて初めて、存在意義が認識されているようでは遅過ぎる。