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 印刷 2019年07月08日デイリー版2面

国内船主の今】(173):日本離れ進むギリシャ船主/商社、内航に活路探す

 「ギリシャ船主のマインドに変化が見られる」

 欧州を拠点とする商社マンがつぶやいた。最近、とみに欧州船社、ギリシャ勢の日本造船所に対する見方の変化を感じるという。

■技術陣は中国育ち

 商社マンが話す。

 「ギリシャでも古参の船主は依然として日本造船所の高スペック、品質という点を経験として語る。しかし、こうした欧州船社、ギリシャ船主でも技術陣は韓国や中国造船で育ったというケースが多い。彼らは日本造船所を知らないだけに、日本造船所に対する幻想は抱いていない」

 どういうことか。

 世界のトップランナーとして走り続けてきた日本造船所だが、リーマン・ショック以降の海運不況、最近では邦船オペレーター(運航船社)の新造用船の凍結で受注がままならない。

 1980年代、90年代に日本造船所がハンディサイズの新船型を次々と開発、こうした新造船に触れてきたギリシャ船主にとって中国造船の台頭はまさに隔世の感がある。

 現在、こうしたギリシャ船主首脳は引退の時期に入り、息子、親戚筋を後継に立て、ファミリー・ビジネスとしての育成の段階に入った。こうした「2世」は日本造船所との取引実績が少なく、その分、思い入れも少ないというのだ。

 海運ブローカーが補足する。

 「もちろん日本造船所が好きなギリシャ船主の2世、3世もいる。しかし、全体的に見れば少数派。実際、中国の国有造船2社の合併で中国造船所の競争力は高まる。バルカー発注で中国造船の優位性は日本造船にとって脅威どころか、死活問題になる」(欧州船社に強い海運ブローカー)

■外航から内航へ

 商社船舶部にとっても足元の邦船社、造船の低迷は事業モデルの変革をいやが応にも促す。

 商社関係者が話す。

 「日本にあるのはゼロ金利政策でのカネ余りだけ。メガバンク、地方銀行の『行き場を失った融資マネー』の到着点がBBC(裸用船)だった。しかし、このBBCでさえ、リース会社の参入で条件が悪化している。そうなると、商社として何ができるのか、正直言って明確な回答を持っていない」(船舶部)

 商社船舶部の仕事はもともと造船所の船台の仲介が主軸。オペと船主と造船所を結び、口銭ビジネスを収益としてきた。

 これが2008年のリーマン・ショック以降、メンコン(主契約)船の引き取り義務の発生を受け、結果的に投資事業としての船腹保有数が増加。現在はこうした船腹のスリム化、BBCや中古船の仲介という本来の口銭ビジネスに戻りつつある。

 別の商社関係者が口を開く。

 「正直言って、船舶部の今治駐在員の要員も老齢BBCの仕組み替えなど、オルタナティブ(応用)案件しか組成できていない。欧州オペ、ギリシャ船主を開拓するといっても、怪しいところばかり。これでは商社が船舶部を持っている意義さえ見いだしづらい」(船舶部)

 商社船舶部のビジネスはこのままどん詰まりなのか。

 最近、一部の商社間で内航船へスポットを当てる動きが出ている。

 外航船に注力してきた商社船舶部がなぜ、今、内航船なのか。

 さらに別の商社関係者が話す。

 「内航船は日本人船員の高齢化、船員不足など問題が山積している。他方、一定の技術を使った自律運航船の実用可能性が高いのは、外航船ではなく内航船。複数の問題に対し、ソリューション(解決策)を提示する。まさに商社のフィールドだ」(船舶部)

 かつて、ある商社船舶部の営業マンが商社の仕事を「つなぐ、結ぶ、ほぐす」と表現した。課題と可能性が交錯する内航船事業は、商社船舶部にとって新たなビジネスモデルの構築の場となるか。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載