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 印刷 2019年07月01日デイリー版2面

国内船主の今】(172):BBC取引、円高で苦境へ/見込み発注膨らむ造船

■「昨年並み」に懐疑的

 6月19日、東京都内。日本造船工業会の斎藤保会長(IHI会長)は会見で、2019年の新造船受注量について「昨年並みの1000万総トンは確保できるのではないか」との予想を述べた。

 造船関係者が話す。

 「受注量だけ見れば昨年並みかもしれない。しかし、中身をよく見てほしい。新造船の発注残のうち、本当に行き先が確定している船舶がどの程度あるのか」(中手造船所幹部)

 海運大手の新規案件が事実上の凍結状態にあって、日本の造船業が厳しくないわけがない。

 総合重機が会長を務める造工に対し、内航船を手掛ける日本中小型造船工業会の方がより厳しい認識を示す。

 6月26日の会見で東徹会長(北日本造船社長)は「造船業界は今、一番厳しい状況」との認識を提示。内航船の受注は堅調に推移しているものの、韓国政府による自国造船への助成の影響もあり需給ギャップが解消されておらず、「船価上昇の足かせになっている」と鋭く指摘した。

 今、造船業界で何が起きているのか。

 商社関係者が解説する。

 「外航船を手掛ける造船関係者なら誰でも知っている。現在、発注残の中には多数のストック・ボート(見込み発注)が含まれており、最終的な船主が確定していない。このまま造船所がこのストック・ボートを持ち続ければ、受注量だけがどんどん膨らんでくる」(船舶部)

 造船所としては、ストック・ボートとして受注した新造船については、国内、海外を問わず船主に売却、引き渡したいのが本音だ。

 海運ブローカーがそのあたりの事情を話す。

 「安値買いのギリシャ船主でさえ、足元では新造船船購入については様子見に入っている。これは新造船を対象にしたBBC(裸用船)取引でも同じ。造船所の船台は表面上、埋まっているが、実際は行き先不明の新造船というケースも少なくない」

■米利下げ、円高懸念

 「ここで円高に転じたら、船舶の運航を停止するオペレーター(運航船社)が出てくる」

 6月18-19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、一部メンバーがドル金利の年内引き下げを示唆して以降、円高傾向が出てきた。25日には一時、1ドル=106円台に入るなど、年初来高値の同104円台の円高懸念さえ浮上している。

 日本船主が話す。

 「BBC取引はドル融資に対しドル用船料、すなわち為替リスクなしが基本。でも、中には地方銀行から金利の安い円融資、ギリシャ船主からはドル用船料というBBCスキームも存在する」(中国地方の船主)

 BBC取引は純粋に船舶の資本費部分を日本船主が肩代わりする契約。

 外航船で1日当たり4000-6000ドル以上とされる船舶管理費用はBBC用船料には含まれない。それだけ「アイドリング」(余裕)が少ない契約といえる。

 地銀関係者が懸念を示す。

 「今春に欧州オペと海外船主が契約したBBC取引で欧州オペが用船料を滞納したという情報が流れた。足元でも、一部のBBCオペが船舶を止めているという未確認の情報が流れている。中小型バルカー市況の低迷が続く中、円高になればBBC取引をしている日本船主は苦境に陥る」(船舶融資担当者)

 定期用船という本流が打ち止めとなり、亜流として生まれたBBC取引。為替リスクは定期用船、BBC双方にマイナス要因だが、BBCの方が余裕がない分、その深刻度は高い。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載