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 印刷 2019年06月28日デイリー版1面

米中貿易戦争の行方】(下)/LNG「第2波」減速も

米国産LNGを積んでパナマ運河を航行するLNGG船(パナマ運河庁提供)
米国産LNGを積んでパナマ運河を航行するLNGG船(パナマ運河庁提供)

■シェールガス革命に影

 米中のあつれきは、北米のシェールガス(非在来型ガス)革命の成長機運に影を落としつつある。

 中国政府は今月1日、米国産LNG(液化天然ガス)への追加関税を10%から25%に引き上げた。昨秋に続くLNG対象の関税第2弾となる。

 邦船関係者は「スポットLNGについては、中国は既に昨秋から米国産の調達を減らしており、今回の関税引き上げのインパクトは小さい」と指摘。一方で「中長期の調達契約では、米国産の購入手控えが広がってもおかしくない」と懸念を口にする。

 特に大きなインパクトが予想されるのが、通称「セカンドウエーブ」(第2波)と呼ばれるシェール新興プロジェクトだ。

 リオ・グランデ(テキサス州)やマグノリア(ルイジアナ州)など、2023―25年ごろの稼働を目指すベンチャー主導のプロジェクトに最終投資決定(FID)遅延の懸念が高まっている。

 こうしたシェールプロジェクト第2波は、これから高成長が見込まれる中国の地方ガス会社の需要に応える新規ソースとして期待されていた。

 しかし今後、中国の中小ガス会社は政府の意向に沿って、米国産の調達を敬遠する可能性が高い。この結果、中国が米国産の調達を減らし、中東や豪州産を増やした場合、海上輸送にトンマイル縮小のマイナス影響が生じることになる。

■2月にストップ

 LPG(液化石油ガス)ではトレードの組み替えが起きている。

 米エネルギー情報局(EIA)によると、米国から中国へのLPG輸出量は昨年9月から急減。今年2月以降は輸出がストップしている。

 中国の需要家は、米国産LPGに追加関税が課せられたことを受け、調達ソースの見直しに着手。中東からの輸入に切り替えている。

 「中国の需要家は、日韓の需要家とカーゴをスワップすることで対応している」(LPG船関係者)

 日韓の需要家が中東の売り主と契約しているカーゴを中国の需要家が引き受ける。その代わりに、中国の需要家が北米の売主と契約しているカーゴを日韓の需要家が引き受ける格好だ。

 需要家が柔軟に対応しているため、米中間のトレードはなくなったものの、「VLGC(大型LPG船)市況への米中貿易戦争の直接的な影響はほとんどない」(同)という。

■G20まで様子見

 ドライバルクでは、中小型バルカーで運ぶ米国産穀物への影響が注視される。中でも大豆は昨年、米国発中国向けの輸送が一時的にストップし、トレードパターンに変化を及ぼした。

 中国向けでブラジル産が代替ソースとして機能し、出荷のピークシーズン後もオーダーが持続。昨秋、ブラジルは中国の調達により輸出が急増した一方、自国消費分については北米からの輸入で補完した。

 「今後も米中間の政治的緊張の高まりを受け、同様の動きが活発化する可能性がある」

 穀物市場関係者はそう指摘する。

 ただ、中国側の需要動向は不透明。家畜伝染病豚コレラの被害で家畜用飼料の大豆ミール需要が減退しているためだ。米農務省(USDA)も今年の中国の大豆輸入量が前年同期比8.5%減に落ち込むと予想している。

 足元は南米積みの引き合いも一服。パナマックスのスポット用船市況は連日8000―9000ドル台で足踏みしている。穀物市場関係者は「28―29日開催のG20大阪サミットで今後の穀物価格の方向性が見えてくる。それまでは様子見が続く」と見通す。

 (この連載は幡野武彦、佐々木マヤ、柏井あづみ、山田智史、鈴木隆史が担当しました)