2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年06月28日デイリー版4面

記者の視点】五味宜範:デジタル化の表と裏/利便と不安「何が起きるのか」

 日本の海事業界では、運航船のデータを大量に集め、データ提供者に不利益にならないよう、そのデータを第三者が活用してソフトウエア(アプリケーション)開発などにつなげるIoS(インターネット・オブ・シップス)-OP(オープンプラットフォーム)の取り組みがスタートした。

 船社、造船所、舶用機器メーカー、船級協会、保険、通信など主要プレーヤーが参加しており、日本の海事クラスターの強みが生きそうだ。世界でも先進的な動きで、この分野で日本がリードし、最終的には日本企業がもうかることにつながることを期待している。

 自動運航船の分野では、小型船での具体的プロジェクトを含め欧州が先行しているように見えるものの、日本では取り組みの歴史は長い。1961年には、船橋から主機を直接操縦し、機関部の監視や制御を機関室下段のコントロール・ルームで集中的に行う世界初の大型自動化船の設計・建造が行われたほか、その後もさまざまなプロジェクトが相次いだ。

 現在も乗組員の負担軽減という観点を中心に、関係者は技術開発などに注力している。

 ある取材先に、デジタル化が進展することについての感想を聞いた。自動運航などのコンセプトは昔からあったが、当時はそのコンセプト通りにはできていなかった。今はその時に思い描いていたようなことが実際にできるようになったという点で、良かったとの評価だった。

 個人的なイメージとして、子どものころにSF小説やアニメで表現された未来の世界が、現実になる時代になったと理解した。

 一方で、不安な面も大きい。「海事産業で40-50年仕事をしているが、これまでをはるかに上回るペースで変化している。何が起きるか分からない。怖い」。別の取材先とデジタル化の進展に関する話をしていた時、相手からふっとこんな言葉が漏れた。

 数年前にあるセミナーに参加した際、船社関係者が自動運航船に関する取り組み姿勢として「業界の秩序がどうせ壊れるなら、それを待っているのではなく、自分から壊していくぐらいの気概を持つ」という内容の話をした。自動運航が実現すれば、仕事がなくなる可能性もある。怖さを感じるのも当然だ。

 海事だけでなく、メディアも含め他産業でも状況は同じ。個人の生活でも、インターネット、ウェブなどに詳しくない人間にはつらい状況が多発している。小さいころに思い描いていた「未来」が実現するようになったという良さと、何が起きるか分からないという不安が同居する気分は今後も続きそうだ。