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 印刷 2019年06月27日デイリー版1面

インタビュー 星港から世界へ―邦船大手の不定期船拠点】(上):MOLケミカルタンカー社長・渡邉律夫氏/タンクコンテナで飛躍(その1)

MOLケミカルタンカー社長・渡邉律夫氏
MOLケミカルタンカー社長・渡邉律夫氏

 邦船大手3社はコンテナ船事業統合に伴い、アジア有数の海事都市シンガポールでの独自展開を不定期船ビジネス中心に推し進めている。本シリーズは邦船社のシンガポール不定期船現地法人のトップに成長戦略を聞く。第1回は商船三井のケミカル船事業会社MOLケミカルタンカーの渡邉律夫社長。

■大西洋への進出

 --今年1月にデンマークのケミカル船社ノルディックタンカーズ(NT、現MOLノルディックタンカーズ)を買収した。狙いを聞きたい。

 「NT買収により、当社のワールドワイド配船が実現した。船腹をインターチェンジするハブ地域がアジア、中東、欧州、米国の4エリアに拡大。貨物の量と仕向け地、顧客も充実したことで多タンクケミカル船のバラスト航海を削減しやすくなり、ロスタイムのない、より柔軟な配船を追求できるようになった」

 「これまで当社は太平洋と中東を中心に航路網を築き、仕向け地として欧州や米国ガルフをカバーしてきた。しかし、大西洋はいわば空白地域に近く、スポット輸送中心だった。船の有効利用の観点で限界を感じ、配船効率とマーケットプレゼンスの両面で大西洋エリアに進出したいと考えていた」

 「NT社はわれわれが未就航の航路や、COA(数量輸送契約)貨物を獲得できていないエリアをカバーしている。配船エリアは大西洋を主とし、大西洋ラウンドや米国ガルフ-南米西岸、カナダ五大湖周辺、北欧州の各航路に展開。南米東岸、南アフリカ航路を除いて、大西洋全域を網羅している」

 「ビジネスモデルもCOA比率が高く、高付加価値カーゴ対象の多タンク船主体に運航しており、当社事業と親和性がある」

■輸送モード拡充

 --今年2月にはオランダのタンクコンテナ大手デンハートフに20%出資し、資本提携を結んだ。

 「当社が目指す“ケミカル総合物流プロバイダー”に向けた物流モード多様化の一環といえる。パーセルケミカルの貨物ロットは数百トンから1万トン以上など多岐にわたり、お客さまはトータルロジスティクスの観点で船やタンクコンテナをボリュームに応じて選択している」

 「われわれもシッピングだけでなく、周辺分野にサービスメニューを広げ、より顧客の物流網に入ることで効率的なサービスを実現しようとしている」

 「まず昨年9月にケミカル総合物流への第一歩として、アントワープでタンクターミナル進出を決定した。ターミナルではカーゴを受け取り、次の物流網につなげる2次輸送のニーズが生まれる。顧客へのエンド・ツー・エンドのサービス提供を目指す上で、当社がタンクコンテナに進出し、輸送モードを広げることは自然な流れだった」

 「デンハートフは約100年の歴史を持つ老舗であり、2016年の英インターバルク買収をはじめM&A(合併・買収)を重ねて世界23カ国に展開するグローバル企業に成長した」

 「同社は現在、保有・リース合わせてタンクコンテナ1万9000-2万本を運用。タンクコンテナ業界で世界6-7位に位置し、最大手のストルト(ノルウェー)や独ホイヤーに次ぐ、2番手グループの筆頭にいる」

 「タンクコンテナ以外にも固体ケミカル輸送用にドライコンテナ7000本も運用している点が特徴的だ。一部にガスコンテナも有し、小口LNG(液化天然ガス)の輸送手段として商船三井のLNG事業とのシナジーも期待できる。さらに欧州をベースにロジスティクス網を構築し、トラック数百台を動かしている」

 「タンクコンテナ業界は過去数年、年7-8%の高い成長を続けてきた。最近ではタンクコンテナを在庫保管用に使うニーズも出ており、需要は多岐にわたる」(2面に続く)

 わたなべ・つねお 78(昭和53)年慶大経卒、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。04年油送船部長、11年取締役専務執行役員、15年東京マリン・アジア(現MOLケミカルタンカー)社長。18年4月から商船三井執行役員を兼務。63歳。