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 印刷 2019年06月24日デイリー版1面

カタールの新造LNG船調達/韓国造船3社に120隻打診。1社40隻で提出。納期23-26年。日本勢は一部見送り

英国のLNGターミナルで揚げ荷役するカタール国営海運ナキラットのQマックス型LNG船
英国のLNGターミナルで揚げ荷役するカタール国営海運ナキラットのQマックス型LNG船

 中東カタールが進める新造LNG(液化天然ガス)船商談で先週前半までに韓国造船大手が1社当たり40隻の建造見積もりを提出した模様だ。2023-26年にかけて年10隻ペースの建造を想定。現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋の3社合わせると120隻規模に達し、カタールはまず船台を確保した上で、今秋をめどに必要隻数分の建造を確定するとみられる。一方、日本造船所は「規模の面で対応が難しい」(造船大手関係者)ことから一部ヤードは応札を見送ったようだ。新造LNG船120隻の投資額は船価ベース(1隻当たり200億円)の単純計算で2兆4000億円になる。

 「カタールの最終的な整備隻数は分からない。まずは韓国で4年120隻の船台を押さえて、そこから必要分をピックアップするのではないか」

 市場関係者はそう指摘する。

 今年のLNG船市場はカタール以外にもモザンビークLNG、パプアニューギニア拡張の大ロット商談が見込まれる。カタールは今後の船台逼迫(ひっぱく)の可能性を考慮し、23-26年納期というかなり先の船台を一気に押さえようとしている。

■「お見合い方式」

 今回の新造商談は、造船所と海運会社をそれぞれ異なる入札で選定してからマッチングする通称「お見合い方式」を採用。まず造船側の商談からスタートし、6月中旬締め切りで日本、韓国、中国のLNG船建造ヤードに見積もりを求めていた。

 カタール国営石油は4月下旬、LNG船の調達計画開始を表明。カタールガスによる60隻規模の整備に加えて、既存船のリプレースを含めると今後10年間の調達規模は100隻超に達するとの見通しを示した。

 カタールのLNG船需要の背景には、自国ガス田「ノースフィールド」拡張、米国で参画する「ゴールデンパスLNG」プロジェクト、既存船隊のリプレースという3つの要素がある。

 ノースフィールド拡張により、カタールのLNG生産能力は24年をめどに従来の年7700万トンから年1億1000万トンに拡大する見通し。年産1600万トンの「ゴールデンパスLNG」はカタール国営石油とエクソンモービルが主導し、24年の立ち上げを目指す。

■日本は劣勢

 一方、日本造船所は建造能力で劣勢に置かれている。

 韓国造船大手のLNG船建造能力は1社当たり年15隻前後に達し、カタールの要求に十分対応できる。日本造船所はシェール革命を追い風に過去最大規模を引き渡した昨年でも、日本全体で10隻強の竣工にとどまり、大宇造船1社の17隻を下回った。

 日本の造船大手関係者は「当社にもカタールから話はきていたが、1社40隻という見積もりには対応し切れない」と話す。カタールの要求する船型がメンブレンタンク船という点も、モスタンクを得意とする日本にとっては不利に働く。

 独自技術となるSPBタンク(自立角型タンク)や、メンブレン型の建造実績を持つジャパンマリンユナイテッド(JMU)は、LNG船の受注再開に時間がかかる見込み。足元でSPBタンクを利用した4隻を建造(一部引き渡し済み)しているものの、LNGの気化を防ぐ断熱材の取り付け作業が高難度なことなどで苦戦している。採算が悪化し、18年3月期連結決算で大幅な赤字を計上した。

 千葉光太郎社長は今年3月の会見で、「まずは受注した4隻をきちんと引き渡す」と説明。今後のLNG船の取り組みについて社内で事業性を見極めるとしている。

 モス型を手掛ける三井E&S造船は、最後の建造から10年超が経過。ガス船に関しては14年に、新船型の「neo82GC」の開発を発表しているが、中規模汎用(はんよう)ガス船で、今回の入札には対応していない。

 一つの希望として、日本のユーティリティー(電力・ガス会社)が今後、カタールとのLNG調達契約の更改時に、輸入側が配船権を持つFOB(本船渡し)条件を締結できれば、日本ヤードの受注の可能性が高まってくる。

 しかし、カタールは長年、輸出側が配船するDES(着船渡し)条件を基本としており「FOBに切り替えるのは至難の業」(ユーティリティー関係者)との指摘がある。

 現時点では日本造船関係者には諦めムードが漂っており、「韓国の総取りも十分にある」との声も上がっている。