2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年06月19日デイリー版4面

記者の視点】山田智史:将来を切り開く原動力/船主本来の事業モデル

 「船主(オーナー)が取り組むべき案件が増えているとも言える。船主が本気を出す局面が到来しているように思う」

 先日、船舶金融関係者を取材した時に聞いた言葉が印象に残った。

 普段はオペレーター(運航船社)を中心に取材しているため、瀬戸内などの船主を取材する機会は多くはない。

 限られた取材機会ではあるが、船主は異口同音に新造案件がないと言う。案件があったとしても、船主・オペ間の用船料のミスマッチがネックになると話していた。

 邦船オペ向けの新造案件がほとんどなく、償却資産の確保に苦慮している船主が多いと思っていたため、冒頭の金融関係者の話を聞いた際に意外な感じがした。

 シップファイナンス関係者が船主が取り組むべき案件と言ったのは、用船契約期間が短い案件になる。邦船勢はドライ船事業などで短期用船志向を強めている。市況変動に対する耐性を強化する狙いからだ。

 用船契約期間が短ければ、船主は船舶資産(アセット)に関するリスクを抱え込むことになる。そのため、用船契約の期間が長い案件に比べると難易度は上がる。

 双方の利害が対立するため実現困難に思えるが、同関係者は「アセットリスクは自己資金を厚めに入れて借り入れを減らし、船隊構成のポートフォリオを組むことなどでマネジメントできる」と言及。「安く仕込んで高く売る船主の本来のビジネスモデルそのもの」だと力を込めた。

 安く仕込んで高く売るというビジネスモデルを実践している船主に話を聞く機会もあった。

 竣工後の投入先が決まる前に、国内造船所に新造船を発注。海外の大手エネルギー会社が実施した商談にその新造船を持ち込み、競争力などが評価されて成約に至ったという最近のトピックスを紹介してくれた。

 海運マーケットや船価相場を見極めて、自社の強みなども勘案しつつ、独自の判断で船舶投資を敢行。引き渡しを受けるまでの間に用船先を確保するビジネスモデルで、海外船主などと渡り合っているという。

 ドライ船事業では2015-16年の市況低迷などを経て、オペレーターは市況変動リスクへの対応を急いでいる。その一環で長期固定船隊を減らし、その部分は柔軟性のある短期・スポット用船で補完している。

 オペレーターのニーズの変化に対応するには、船主の本分を全うすることが鍵になりそうだ。船主の本来のビジネスモデルとされることを実践するのは容易ではないとみられるが、将来を切り開く原動力になる可能性もある。