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 印刷 2019年06月17日デイリー版2面

国内船主の今】(170):老齢船BBCでキャッシュ創出/ホルムズ炎上、虎視眈々

 「ホルムズ海峡でフロントラインのタンカーが爆破攻撃を受けた。イランの攻撃に違いない。タンカー市況が火を噴くぞ」

■中古MRの購入増か

 13日夕、東京拠点の海運ブローカーが息せき切って電話を入れてきた。

 ペルシャ湾岸の入り口となるホルムズ海峡は常にタンカーの関所の役目を果たしてきた。2003年3月に勃発したイラク戦争時にVLCC(大型原油タンカー)市況は急騰した。

 ペルシャ湾内に入港する日本勢のVLCCはなく、海外オペレーター(運航船社)がプレミアム(割増料金)で配船を試みる。

 海運関係者が振り返る。

 「VLCCの運賃が一気にWS(ワールドスケール)100を超え、用船料も8万ドル超にまで達した。今のように米シェールオイルの供給もなく、西アフリカしか代替供給源がなかったのが実情。われわれも高い金を払って海外オペのVLCCの手配をした記憶がある」(海運大手幹部)

 ホルムズ海峡が中東の火薬庫となったことで、タンカー市況の行方が一気に不透明感を増した。

 原油、石油製品ともに市況が上昇することはほぼ確実との見方もある。

 とりわけプロダクト船市況に与えるインパクトは絶大だ。

 海外船主が話す。

 「IMO(国際海事機関)の適合油導入に伴い、ただでさえ年後半に向けてMR(ミディアムレンジ)型プロダクト船市況の上昇が見込まれている。中東の石油製品出荷に不安が残れば、代替ソースは米国、欧州、アジアと各地域のコンビネーション輸送になる。船腹需給が引き締まる可能性は高い」(シンガポール船社)

 ホルムズ海峡の炎上に伴い、中古プロダクト船を購入する動きさえ出てきた。中古プロダクト船の船価は足元で横ばい。「日本船主をBBC(裸用船)の受け皿に、中古船を仕込む海外オペが必ず出てくる」

 冒頭に登場した海運ブローカーは確信を持って話した。

■BBC何でもあり?

 「海外船社G社が船齢15年以上の老齢船を日本船主に売却しようとしている」

 6月第2週の東京都内。商社関係者が情報の確認を急いでいた。

 減価償却が終了した保有船を第三者に売却することは何も珍しくない。問題は、ここでもBBCスキームを使おうとしている点にある。

 商社関係者が解説する。

 「G社は本来、自社船を運航し続けるか、老朽化したなら生き船売船、駄目ならスクラップ処分するのが順当な手段。今回、日本船主に老齢船を売却してキャッシュ・ジェネレート(現金創出)し、さらにそれをSLB(再用船)で使い続けようとしているところに別の目的が見え隠れする」(船舶部)

 商社関係者の指摘する別の目的とは何か。

 すなわち、運転資金の捻出である。

 地方銀行関係者が補足する。

 「G社ばかりではない。海外船社N社も老齢ケープサイズを日本船主に売却、同じようにキャッシュ・ジェネレートして経営の運転資金に充てようとしている。そうした経営不振感の強い海外船社にSLBされる中古船に融資を実行していいのか」(船舶融資担当者)

 海外船社が老齢船を売却してSLBすることを誰も止めることはできない。問題は、その受け皿として日本船主、日本の金融機関が浮上していることにある。

 BBCでの再用船期間は5-8年と老齢船とは思えない長期契約も検討されている模様。「BBCもここまでくると、何でもありという感じだ」

 愛媛県の今治地区に拠点を置くベテラン船主がため息交じりに感想を漏らした。

 (国内船主取材班)

 =毎週月曜掲載