2019 日本コンテナ航路一覧
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 印刷 2019年06月13日デイリー版1面

インタビュー 海運トップに聞く19年度の舵取り】(4):飯野海運社長・當舍裕己氏/適合油対応、物流止めぬ

飯野海運社長・當舍裕己氏
飯野海運社長・當舍裕己氏

 --2020年3月期の連結営業利益は48億円を見込む。ケミカル船を取り巻く事業環境の展望は。

 「中東や北米で新たな石油化学プラントが立ち上がる。それに合わせ、新たな石油化学製品の荷動きが生まれる。一方で、当社が主戦場とするステンレスタンク仕様の3万重量トン型以上の新造船の供給は限られる。これらファンダメンタルズだけをみれば、船腹需給はもっと早くバランスしてもおかしくなかった」

 「プロダクト船の流入が、需給バランス改善を遅らせていた。しかし、石油製品の荷動き増加を受け、プロダクト船が本来の貨物の輸送に回帰している。SOX(硫黄酸化物)規制に適合した低硫黄燃料油への切り替えが始まると、船舶稼働率が低下し供給が絞られる可能性もある。下期にかけて需給のタイト化が期待できる」

 --ケミカル船の運航規模は拡大している。

 「COA(数量輸送契約)比率は7割を保ち、市況変動の影響を受けにくい体制は維持している。だが、輸送数量が減ればその影響は免れない。米国は中国だけでなく、イランとの間でも緊張が高まっている。貿易戦争や経済制裁による荷動きへの影響を注視していく」

■環境配慮も責務

 --SOX規制の影響は織り込んでいるか。

 「BIMCO(ボルチック国際海運協議会)が推奨する用船契約のSOX規制に関わる追加条項では、規制適合油を使用するための準備は船主が、適合油を焚(た)くことによるコストアップは用船者が、それぞれ責任を負うと規定されている」

 「ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮しなければ持続的な成長は見込めないとの考え方が浸透し、企業体として環境に対する姿勢が問われている。COA運賃にSOX規制の影響をどのように反映するかで合意済みの荷主とそうでない荷主がいるが、環境対策費用は社会全体で広く負担すべきという共通認識は醸成されつつある」

 --SOX規制の適用開始まで半年あまりとなった。

 「硫黄分0・5%以下の規制適合油とはいっても、規制内で品質、性状にばらつきが出ることが予想される。同じ石油会社が生産・販売するものでも、世界中で均質の適合油が供給されるわけではない。異なる製法の適合油を混ぜた場合にどうなるのかもわからない」

 「もしも船舶の運航が止まれば、本来の役割を果たせなくなる。物流が止まる恐れもある。そういった事態になれば、世界経済に与えるインパクトは計り知れない。世界の物流が滞ることがないように、万全の準備をすることが船会社としての責務だ」

■配船時機見極め

 --ケミカル船は米州に定期配船し、シェール由来貨物を取り込む方針だ。また、ケミカル船関連ビジネスの取り組みは。

 「米州配船は引き続き適切なタイミングをうかがっていく。世界全体の運賃レベルが上がり、荷動きが活発化してこない限り、配船するリスクのほうが大きい。ターミナル事業やタンクコンテナ事業は否定するものではない。ただ、当社はケミカル船以外に不動産やドライ船などの多様な事業を手掛けている。その中でポートフォリオを組みバランスをとっている」

 --前期は新造VLCC(大型原油タンカー)を整備した。

 「今期と来期で計3隻の竣工を予定しており、いずれも国内石油会社との中長期契約に投入する。中期経営計画『Be Unique and Innovative.』で掲げた重点強化策の一つである『安定収益の磐石化』に向けた取り組みを具体化できた。原油タンカーにおいては長年にわたり培ったノウハウと顧客との取引関係を大切に継承している。当社を評価してくれる顧客の期待に応えていく」

 --ドライバルク船事業の位置付けは。

 「環境問題の観点から石炭火力は逆風にさらされている。ただ日本のエネルギー事情の現況を考えると、経済的で安定的な電力の供給は石炭火力なしには成り立たない。中長期契約を中心に顧客ニーズに対応していきたい」

 --LNG(液化天然ガス)船事業の運営方針は。

 「仕向け地制限のない契約の増加と契約期間の多様化が、LNGのコモディティー化を促している。用船者も船隊の柔軟性を確保するために、中短期用船を組み込もうとしている。一方でエネルギーの安定供給という社会的責任を果たすため、用船者は引き続き一定の基幹船隊を必要としている。安定収益につながるような商談があればいつでも対応する準備はできている」

 --不動産は新橋田村町地区の再開発事業が21年の完成を予定している。

 「再開発事業完成の先を見据え、若手が中心となり、次世代オフィスビルを研究している。飯野ビルのような大型オフィスビルが必要なのかどうか。近視眼的な考え方ではなく、長期的な視点に立ち次の展開を模索している」(随時掲載)

 とうしゃ・ひろみ 81(昭和56)年早大社会科学部卒、飯野海運入社。09年総務企画グループリーダー、10年取締役執行役員、13年取締役常務執行役員、16年6月から現職。神奈川県出身、60歳。