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 印刷 2019年05月15日デイリー版4面

貿易手続きとインフラ構造改革】(22):平田義章「日本の輸入手続き」(2)/輸入時間短縮、AEOでも効果薄

表・グラフ

 当紙の現地調査によると、中国・上海では輸入貨物の本船到着前の事前申告が認められており、混載貨物であっても本船入港前に全ての貨物の申告がなされ、許可を受けていれば、入港後すぐにコンテナを引き取れるという(4月11日付「記者の視点」)。この“洋上通関”は以前から行われていたが、港湾での貨物の滞留などを避けるため、ここにきて本格的な実施に入る模様である。

 上海ばかりではない。米国では本船入港の5日前から貨物の引き取り申告ができる。韓国でも同様に、5日前から可能。これに対して、わが国ではAEO(認定事業者)に限り、特例輸入申告として本船入港前の引き取り申告が認められている。一般貨物は船降ろしして保税地域へ搬入しなければ、輸入申告ができない。

 では、まずここで、財務省が昨年実施した輸入通関手続きの所要時間調査に基づき、わが国の現状を確認する(表参照)。

 ◆輸入の許可を受けるまでになぜ2・6日も必要か

 まず、本船が入港し、貨物がCY(コンテナヤード)へ搬入されるまでに29・2時間。そしてターミナルが搬入の確認をNACCS(輸出入・港湾情報処理システム)へ伝達した後、申告が開始できるまでに30・1時間(貨物の搬入が確認されなければ申告は受理されない)。申告し許可を受けるまでは2・1時間。合計61・4時間(2・6日)を要している。

 ここで留意すべきは、搬入から申告までの30・1時間である。なぜ搬入後、直ちに申告ができないのか。それは、ターミナルは搬入の確認をコンテナごとに個別に行うのではなく、まとめて一括して行うためである。

 そして、この合計2・6日は本船入港から輸入の許可を受けるまでの時間であり、貨物を荷主に引き渡すまでターミナルからの搬出などにさらに時間を要する。

 ◆AEO貨物でも速やかに許可にならない理由は何か

 AEO申告のコンテナ貨物と、全コンテナ貨物の手続きの所要時間を比較する。まず、申告から許可までの時間はAEO貨物が0・1時間、全貨物では2・1時間とAEO申告の時間短縮効果が歴然と現れている。AEO貨物のほとんどは審査区分1(簡易審査扱い)となるためだろう。入港からCYへの搬入、搬入から申告までの時間でも、AEOの方がおしなべて短縮されている。

 ところが、入港から許可までの総所要時間では、AEO貨物が47・2時間、全貨物が61・4時間である。AEO申告の方が短縮されてはいるが、大きく差が付いているとは言い難い。

 AEO輸入者には特例輸入申告が認められていても、貨物が到着した後、申告することも可能である。従って、現実には多くのAEO貨物は従来通り、到着の後、保税地域であるCYへ搬入され、申告されているとみられる。たとえ、一部の貨物について到着前に申告し許可を受けているとしても、全体的に貨物の引き取りを大きく早めるまでには至っていない。

 では、リードタイムの短縮に向け、なぜ到着前の申告に踏み切らないのか。理由としては、申告の時期を前倒しする事務的負担や、到着前に許可を受けても船降ろしやターミナル内の作業手順はこれまでと同様であり、貨物の搬出が早くなるわけではないことなどが挙げられる。そうすると、特例輸入申告の特典としては、現状では申告から許可までの通関時間の短縮や現物検査の軽減などに絞られる。

 ◆申告官署の自由化は試行されているか

 AEO輸入者ならびにAEO通関業者に輸入通関手続きを委託する一般輸入者には、貨物の蔵置場所にかかわらず任意の税関官署を選択し、申告する自由化申告が認められている。ただし、全コンテナ貨物の合計所要時間61・4時間に比較して、自由化申告のコンテナ貨物の所要時間の合計は61・5時間と何ら改善されていない。

 加えて、申告から許可までの時間は1・9時間。AEO申告にもかかわらず全コンテナ貨物の2・1時間に近く、AEO貨物の通関時間0・1時間に比較して大幅に長い。想定される要因としては、当業務の実施は2017(平成29)年10月8日からであるため、求める効率化に向けての運営がなお試行中であることと考えられる。

 ◇

 わが国の輸入手続きの改革に大きな障害となっているのは、やはり「保税搬入原則」と言えよう。わが国の税関手続きのベースにあるこの原則の抜本的な改革が実現しない限り、手続きを簡素化しても現実的な効果を期待するのは難しい。

(国際ロジスティクスアドバイザー)

=隔週掲載