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 印刷 2019年05月09日デイリー版2面

Close upこの人】日本サルヴェージ社長に就任した大谷弘之氏/2事業で「より深く、より広く」。グローバル展開強化へ

日本サルヴェージ社長・大谷弘之氏
日本サルヴェージ社長・大谷弘之氏

 「『より深く、より広く』を掲げ、海難救助、海洋工事の分野でなくてはならない会社として、社会に貢献し、一層発展していきたい」

 日本サルヴェージの社長に就任した。同社は創立85周年だが、創業は、三菱長崎造船所海難救助部時代の125年前までさかのぼる。「この会社は日本の海難救助の歴史を背負ってきた」と歴史に裏付けられた存在意義を強調する。

 日本サルヴェージの事業は海に関する財産(船、貨物など)・環境(海洋汚染など)救助と、海洋工事。救助事業がメーンとなるものの、海難事故の発生頻度、規模、様態は不透明。「ある意味で消防のような公的な役割もあり、民間企業として事業を継続するのは難しさも伴う」。その観点で40年ほど前から海洋工事にも注力する。足元では海底電力ケーブル敷設が柱の事業に成長した。売り上げのうち、救助が約70%、海洋工事は約30%を占める。

 「また、アジアをはじめ世界の海での救助・工事にも多くの実績を積んできたが、引き続き積極的にグローバルな展開をしていきたい」と語る。

 同社は海難救助船として「航洋丸」「早潮丸」、多目的作業台船として「海進」「開洋」「正国」「海島」を保有するほか、多様な最新設備を備え、複雑化する救助、海洋工事に対応する。

 「航洋丸」は曳航能力(ボラードプル)132・5トンと日本でトップクラスで、VLCC(大型原油タンカー)などの大型船舶をけん引することが可能。近年は深海の沈船撤去や環境調査にも活用できる水中ロボット(ROV)、日本で最大級の海底電力ケーブルを敷設できる台船など新たな設備を相次いで導入している。今年からは飽和潜水装置を本格稼働させた。

 潜水作業員は海底での作業ごとにその前後で加圧、減圧する必要がある、飽和潜水装置を導入することで、加圧減圧1回で水深300メートルまで時間に制限なく安定した作業が可能となった。

 海難事故は減少傾向にある一方、船舶の大型化・複雑化が進展。人材や設備の高度化が必要となっている。海難事故が少なく設備の不稼働が続けば経営への影響は大きい。「このギャップにいかにして対応していくか」を課題の一つに挙げる。海洋工事に関しては、国内で洋上風力発電導入の動きも活発化しており、今後も海底電力ケーブル敷設需要は拡大する。作業効率化に向けた技術・設備拡充も進める。両事業ともに、「大切なことは『人材を核とした技術力』と『設備』を常にブラッシュアップしておくこと」と強調する。

 座右の銘は泰然自若。趣味はゴルフとボート釣りで、以前は「魚群探知機を利用し東京湾でさまざまな魚を追い掛けた」と語る。社長就任で忙しいが、「一段落したらまた行きたい」。(五味宜範)

 おおたに・ひろゆき 81(昭和56)年慶大経卒、東京海上火災保険(現東京海上日動火災)入社。15年常務執行役員、19年2月日本サルヴェージ顧問を経て、同4月から現職。