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 印刷 2019年05月08日デイリー版2面

国内船主の今】(164):山口FG、海事交流会/マネロンは対岸の火事か

 4月19日、広島市内。

 ANAクラウンプラザホテル広島では山口フィナンシャルグループの海事交流会が開催されていた。

■融資残高約4000億円

 冒頭、あいさつに立った吉村猛社長が力強く言い放つ。

 「過去3年間で海事産業への融資は76%増加し、融資残高は4000億円弱まで増加。これには私自身も驚いている」

 船舶ファイナンスで地銀最大規模の融資残高を持つ広島銀行のお膝元で開催した海事交流会。

 呉、尾道の船主が圧倒的多数を占める中、今治からも船主が参集した。海運大手3社の関係者、今治造船など造船関係者、商社を含めた参加者は約300人。

 それ以上に目を引くのが100人という行員の数。「それだけ山口フィナンシャルは船舶融資部門に社運を懸けているということだ」(呉船主)

 商社関係者が補足する。

 「山口フィナンシャルは山口銀行を主力に、もみじ銀行、北九州銀行と三位一体となって船舶ファイナンスを伸ばしている。特に目を引くのが九州をカバーする北九州銀行だ」(船舶部)

 別の商社関係者も続く。

 「北九州銀行と一緒に長崎県、佐賀県といったこれまで外航船には縁のなかった内航船主を発掘している。その成果は既に得られた。足元はBBC(裸用船)案件の条件が厳しく、数は少なくなったが、少なくとも北九州銀行は過去3年間で外航船の船舶ファイナンスで実績を大きく伸ばしている」(船舶部)

 新興船主と呼ばれる九州地方の船主たち。九州には福岡銀行など船舶ファイナンスで先行する金融機関もある。

 かつて福岡銀行が船舶ファイナンスで「台風の目」と四国、中国のシップ・ファイナンス担当者から恐れられた。福銀は過去、数度の海運不況、為替変動を経て、現在は船価重視の手堅いシップ・ファイナンスに転じている。時代とともに変遷と勃興を繰り返す地銀の船舶融資。

 新旧交代と言えば簡単だが、果たしてそれだけにとどまるか。

■Pパイオニアの余波

 「海事産業はマネーロンダリング、テロ資金供与対策上の注目産業として見られている」

 同日開催された講演会。

 山口フィナンシャルグループ・コンプライアンス統括部の担当者は厳しい表情で説明した。

 日本海事新聞は2月26日付1面で「BBC契約/資金洗浄リスク浮上。イラン・北へ配船懸念。金融庁指導ケースも」と報じた。

 当初、多くの船主がわれ関せずの態度を取った。しかし、最近はやや風向きが変わりつつある。

 中手船主が話す。

 「BBC契約でもBBCオペレーター(運航船社)に配船地域を制限する条件を盛り込むのは一般的。だからマネロンなどに自分の船が配船されるリスクは皆無と思っていた。しかし、あの事件をみると、そうも言っていられないと感じている」(日系海外船主)

 あの事件とは、4月上旬、韓国籍タンカー「Pパイオニア」(7800重量トン)が北朝鮮に約4300トンの石油製品(軽油)を供給した疑いで、釜山港で拘留されていることが明らかになった事件だ。同船は4月24日時点で依然として拘留されている。

 地銀関係者が話す。

 「金融庁の地銀に対する審査強化、合併を促す姿勢は日増しに強まっている。そんな中、地銀が融資するBBC船が万が一にも北朝鮮やイランなど禁輸国家への輸送に携わっていれば、米ドル取引の制限、多額の制裁金を課されるなど大変な事態になる」(船舶融資担当者)

 マネロンなど「対岸の火事」という意識は依然強い。

 世界中に日本船主のBBC船が運航している現在、対岸の火事と感じている意識は、むしろ少数派かもしれない。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載

 今週は月曜日が休刊日のため、水曜日に掲載しました。