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 印刷 2019年04月24日デイリー版4面

渋滞学の権威・東大・西成教授/ロボット物流見学。「人手不足対策のツールに」。物流業界に高度人材を

物流ロボット「イブ」の稼働現場を歩く西成氏(右)
物流ロボット「イブ」の稼働現場を歩く西成氏(右)

 渋滞学の権威である西成活裕・東京大学先端科学技術研究センター教授は19日、千葉県印西市で無人搬送ロボット「EVE(イブ)」を活用したピッキングシステムを見学した。イブが商品の保管棚を作業者の元に運ぶロボット物流を間近で見た西成氏は「近未来の物流の姿を見た」と驚嘆。「イブは物流業界の人手不足対策のツールになる」と強調した。

 西成氏が訪れたのは印西市の大型物流施設「プロロジスパーク千葉ニュータウン」の一角。EC(電子商取引)の受注から発送までの業務を代行するフルフィルメントを手掛けるアッカ・インターナショナルの物流拠点だ。イブを開発・製造する中国ギークプラスの日本法人の佐藤智裕社長、同社代理店の協栄産業の萩谷昌弘取締役常務執行役員らの案内で、約8000平方メートルの“ロボットエリア”を歩いた。

 同区画には二千数百台の保管棚が並び、3社5ブランドのアパレル商品が格納されている。90台のロボットが必要な保管棚を持ち上げ、スタッフの待つ作業場に運んでいく。これによって、人は商品の棚入れやピッキングのために歩く必要がなくなる。現場の作業負荷を軽減できるのに加え、生産性を3倍以上に向上できる。

 アッカは導入当初、約2600平方メートルのスペースで30台のロボットを運用していたが、運用規模を3倍に拡大。導入前はピッキングに15-20人を配置していたが、今では最大4人になっている。「その分、人はより創造的な領域にスキルアップすることができる」と西成氏は指摘する。

 中国では、イブはEC大手などに多くの納入実績がある。日本では2017年にアッカが導入したのを皮切りに、スポーツ用品大手のアルペンや大手アパレルのTSIホールディングスが利用を開始。いまでは国内約10カ所で約700台(受注残含む)が稼働しており、稼働台数は年内に1000台になる見込みだ。

 加えて、ギークプラスは昨年、海外展開を本格化し、現在は19カ国でイブを販売。全世界での稼働台数は5000-6000台に達する。このスケールメリットにより、他社の同タイプのロボットよりも価格を抑えられるという。

 同社は実運用の中でイブの改良を続けてきた。西成氏はイブについて、「BCP(事業継続計画)対応を含め、(使いやすさが)よく考えられている」とも話す。

 その一つが柔軟性だ。導入が容易な上、商品に合わせて棚の形を自由に設計可能。取り扱う商品や物流の形態が変わっても対応できる。パレットやカゴ台車の搬送に適した機種もそろえており、ピッキングだけでなく工程間の搬送、仕分け作業にも活用できる。

 佐藤社長は「組み合わせにより、さまざまなソリューションを提供できる」と胸を張る。

 30分の充電で10時間稼働でき、充電は自動充電。災害などで停電しても、大規模なマテハン(荷役機器)と違って人手で作業を行えるメリットも大きい。

 イブの活用は物流業界に高度人材を呼び込むことにもつながりそうだ。西成氏は大手物流企業と東大に物流の寄付講座を開講する検討を進めている。「講座を受講する学生がイブが動くバックヤードを見れば、物流業界にも活躍できる場所があると興味を持つだろう」と力を込める。

 ギークプラスは今後、ロボットフォークリフトを日本でも発売する方針。西成氏は「(庫内が)一気通貫で機械化される未来が見えた。すると、物流業は労働集約型産業から装置産業になる。これは革命ともいえる」と興奮気味に話す。

 西成氏は分野を横断し、さまざまな渋滞を研究している。拠点内で稼働するイブの数が多過ぎれば渋滞が発生しかねない。ギークプラスはそうした事態が起こらないようシミュレーションし、検証した上で導入を提案するが、同氏は「台数の最適解の研究など、渋滞の観点から協力することも考えたい」と、システムの進化に期待を示した。