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 印刷 2019年04月12日デイリー版5面

記者の視点】五味宜範:M&Aに変化/きっかけ多様化、今後も注視

 フィンランド南西部のトゥルク市に位置する独造船マイヤー・ベルフトグループのマイヤー・トゥルクの工場を2015年に訪れた。

 マイヤー・トゥルクは以前、韓国STXグループのSTXヨーロッパの子会社だった。経営難に陥ったことを踏まえ、14年に同社株式の70%をマイヤー・ベルフト、同30%をフィンランド政府系投資会社がそれぞれ取得し、社名をマイヤー・トゥルクに変更。15年6月にマイヤー・ベルフトが30%分も追加取得し、100%子会社とした。

 買収した理由についてマイヤー・ベルフトグループ首脳は、顧客ニーズに対応した柔軟な建造の実現、技術開発・コスト削減などの相乗効果発揮、共同での研究開発・サービス実施などに加え、現地に根付いている舶用機器メーカーのネットワークを維持する点を挙げていたことが印象に残っている。舶用メーカーとの関係を重視していることも強調し、その具体例としてABBのポッド(繭)型推進器がマイヤー・トゥルクの前身企業とABBの共同開発で生まれたことを紹介した。

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 08年12月、グループ4社とともに会社更生法の適用を申請した辻産業の国内舶用事業を大島造船所が支援し、相浦機械の誕生につながった。09年に開かれた大島造船所の定例会見では、旧辻産業の同事業受注残のうち大島造船所分が一定の割合を占めており、この分が納入されなければ自身も影響を受けること、地元自治体からの要請もあったことなどの経緯が語られたことが記憶に残っている。

 外航ケミカル船建造などを手掛ける福岡造船は昨年、漁船や内航船を建造する渡辺造船所、同じくケミカル船建造を担う臼杵造船所を相次いで買収した。2件とも、買収される側の経営難による救済型ではなかったことが目を引いた。

 特に渡辺造船所は、同社経営陣の高齢化と後継者不足がきっかけとなった。現経営陣引退後も顧客、従業員が安心できるためにどうしたらいいか検討する中で、メインバンクに相談。銀行側から福岡造船による買収案(福岡造船との統合)が出され、渡辺造船所は最終的にそれに応じた。

 M&A(合併・買収)というと、まず同業者同士で一方の救済や規模の拡大に向けた動きと考えがちだが、個々の事例をよくみると単純ではないことが分かる。造船と舶用機器メーカーの間でもあり得るほか、後継者不足のような、これまでなかったような新たなきっかけも、これから出てくる可能性がある。幅広い観点で今後の動きを見ていきたい。