電子版6つのNEW
 印刷 2019年04月11日デイリー版4面

記者の視点】梶原幸絵:貿易手続き、中国が円滑化へ/日本も発想の転換が必要

 先日訪れた上海で、日系フォワーダーの関係者から気になる話を聞いた。昨年秋ごろから年末にかけ、輸入のLCL(小口貨物)を積載したコンテナが上海港のCY(コンテナヤード)で留め置きされることがある、と日系混載業者がこぼしていたという。

 上海では輸入貨物の本船到着前の事前申告が認められており、混載貨物を積んでいるコンテナのうち、申告済みの貨物が一定割合を満たすまでデバンニング作業に入れないというのだ。逆に、本船入港前に全ての貨物の申告がなされ、許可を受けていれば、入港後すぐにコンテナを引き取れるという。

 輸入貨物の事前申告制度自体は上海では数年前に始まっていたが、一般的ではなかったとフォワーダー関係者。しかし、先の留め置きの話は、税関当局が事前申告を義務付けるための布石ではないかという。

 これは考えられない話ではない。昨年11月、習近平国家主席が中国の物品・サービスの輸入額が今後15年間で計40兆ドルを超えるとの見通しを示すなど、中国政府は輸入を拡大していく方針だ。そのためにも、輸入通関を滞らせるわけにはいかない。大量の輸入貨物が港湾に滞留し、混雑する事態も避けたいところだろう。

 セキュリティー上も、事前申告にはメリットがある。税関当局は貨物の情報を早期に収集し、リスクの高い貨物をターゲティングすることができる。そして、無論コンサイニー(荷受人)は貨物の引き取りが早くなり、輸入リードタイムを短縮できる。

 とかく評判の悪かった中国の輸入通関。上海での取材中、まだまだ悪評が聞かれた一方で、以前に比べると格段にスムーズになったという声も複数あった。ある日系倉庫会社によると、上海では定期的に輸入されている貨物であればマニフェストでの事前輸入通関が可能で、許可のスピードが速すぎるくらいだという。また以前は事前申告をしても、関税などの振り込み証明がなければ許可が下りなかったが、いまはインターネット経由で納税できるため、そうした証明は不要という。

 課題はゼロではないにせよ、中国の通関管理が手続きを円滑化する方向へ大きく変わっていることは間違いないだろう。ただ、日本機械輸出組合が3月に開いたセミナーの解説によると、手続きの利便性を高める半面、事後の取り締まりを強化している。AEO(認定事業者)制度も運用し、米国などと同様、貨物の現物管理から輸出入者単位での管理を強めていることもうかがえた。

 日本はどうか。本紙4面に連載を持つ国際ロジスティクスアドバイザーの平田義章氏は、貿易手続きの簡素化の必要性を繰り返し指摘している。世界銀行の調査などからも、日本の貿易手続きが先進国標準から遅れていることは明らかだ。

 日本はセキュリティーの確保と貿易の円滑化を図るため、AEO制度を導入した。しかし、同制度はもともと米国主導のセキュリティー対策を主眼としたものだ。貿易手続きの円滑化に向け、AEOに関係なく手続きの簡素化を進め、セキュリティーはセキュリティーで強化する。そうした考えが必要ではないだろうか。