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 印刷 2019年04月08日デイリー版2面

国内船主の今】(161):韓国タンカー、「瀬取り」拘留/BBC違法配船リスク

 4月4日、東京・内幸町のプレスセンタービル。記者の携帯に海運ブローカーから一本の電話が入った。

 「韓国籍タンカーが釜山港で拘留されている。北朝鮮にライタリング(洋上での貨物積み替え)で軽油を供給した容疑だ」

■ライタリングで供給

 事実ならば、国連安全保障理事会の制裁決議違反になる。

 日本の海運業界にとって恐ろしいのは、BBC(裸用船)船のマネーロンダリング(資金洗浄)、制裁国への違法配船につながるのではないかといったリスクにある。

 海運ブローカーが話す。「韓国籍タンカーは『Pパイオニア』。7800重量トン型の小型プロダクト(石油製品)船で、今回は約4300トンの軽油を北朝鮮船籍のタンカーに移し替え、供給した容疑が持たれているようだ」

 米財務省は3月時点で北朝鮮にライタリングで軽油を供給した容疑でタンカー18隻、北朝鮮から石炭を輸出した容疑でバルカー49隻のリストを公表している。

 日本船主が胸をなで下ろす。

 「リストに万が一でも日本関連船、つまり実質所有が日本船主の船であれば、制裁決議違反として融資銀行を含め全てが違法行為に認定されてしまう懸念がある」(今治船主)

 しかし、日本関連船が今後も北朝鮮やイランなど制裁国に配船されないという保証はどこにもない。

 それこそが2016年以降、日本船主の契約が増加しているBBC取引のリスクの一つである。

 地銀関係者が話す。

 「今夏にも、金融庁が国際政府機関のFATF(金融活動作業部会)のガイドラインに基づき地銀に調査に入る見通しだ。ただでさえ金融庁は地銀の収益力に目を光らせている。BBC取引で本船の配船先を把握できないなんて、とても言える雰囲気ではない」(船舶融資担当者)

■本船動静把握できず

 BBC取引が通常の日本船主の「定期用船」契約と大きく異なる点は、本船の船舶管理を日本船主がコントロールしていない点にある。

 定期用船の場合、日本船主の船舶管理会社、もしくは契約を結んだ第三者が船長や機関長、船員を派遣する。日本船主は本船の動向を把握しつつ、用船者(チャータラー)の配船計画に基づき本船を運航する。

 従って、「定期用船契約を結ぶ本船がどこにいるか分からないといったことは、契約上も物理的にもあり得ない」(呉船主)

 しかし、BBC契約の場合、日本船主は船舶そのものだけを保有、船長や船員の派遣など船舶管理業務は用船者側が行う。

 「本船の占有権は日本船主になく、チャータラー側、つまり欧州船社やギリシャ船主などBBC契約で船を借りている側が全てコントロールしている」(BBC取引に強い海運ブローカー)

 しかし、本当にBBC取引では船主側に制裁国への配船拒否はできないのか。

 香港オペレーター(運航船社)が話す。

 「通常のBBC契約では北朝鮮やイランなどへの配船は考えられない。もちろん、BBC契約の際、船主はBBCチャータラーと配船地域について制限条項を盛り込む。あり得ない」(香港オペ幹部)

 しかし再度、本当にBBC船が制裁対象国に配船されたり、北朝鮮へライタリングなどに使われたりする懸念はゼロと言えるのか。

 地銀関係者が話す。

 「われわれはリスクがゼロとは思っていない。そのためにIHSマークイットの船舶動静システムなどの購入を進めている。日本船主との金銭消費貸借契約にも配船地域の制限条項を盛り込むのも、本船の動静を把握するためだ」(船舶融資担当者)

 韓国籍タンカーの北朝鮮船へのライタリング。BBC船について改めてリスクが再燃している。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載