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 印刷 2019年04月01日デイリー版2面

国内船主の今】(160):変革、地銀に融資判断迫る/オーバー200ミリオン浮上

 3月下旬の愛媛県今治市内。大手船主の事務所では人の出入りが激しかった。

 商社関係者が話す。

 「今治船主はこれまでBBC(裸用船)取引には距離を取っていた。しかし、ここまで定期用船案件が減ってしまっては、BBCに反対していた有力船主も手を染めざるを得ない」(船舶部)

■船主との関係「変容」

 有力船主の保有船も様変わりしている。従来のバルカー、タンカーから1万4000TEU(20フィート積み)超のメガコンテナ船、LNG(液化天然ガス)船への保有へと投資額が巨大化している。

 有力船主が話す。

 「海運大手はバルカーやタンカーでは新規商談どころか、既存船の返船ばかり要請してくる。解約金をもらっても再投資する案件がない。それならばこれまで手を出さなかった船種も検討せざるを得ない」(今治船主)

 韓国造船は2万TEUといったメガコンテナ船の建造を複数手掛ける。

 足元ではこうしたメガコンテナ船に対し日本船主がBBCで保有、海外オペレーター(運航船社)へ再用船で出す案件が複数発生している。

 海運大手から得た解約金を海外オペ向けBBC案件の原資にする。

 かつて想像できなかった商慣行が水面下で進行している。日本の海事行政、海運大手はこうした船主の「変容」を把握しているのか。

 海運大手関係者が話す。

 「われわれオペと船主の付き合い方が変わってきていることは認識している。海運大手の中にも、中型バルカー以下は定期用船ではなく、海運市場から短期調達する会社も出てきている状況だ。今後は、オフバランス(簿外取引)の担い手としてメガコンテナ船やLNG船を保有する船主との取引が増えてくるだろう」(海運幹部)

■日伸がLNG船発注

 「日本船主の二極化は今後、さらに加速するだろう」

 地方銀行幹部がつぶやいた。

 日本船主の「二極化」は既に2-3年前から議論されていること。何を今さら、という記者の雰囲気を察し、同幹部が続ける。

 「二極化というのは従来のように大手船主とその他船主、という区分ではない。『投機目的』『中国造船への発注』をいとわない、従来の日本船主のビジネスモデルを打ち破る船主とそれ以外の船主、ということだ」

 東京都中央区に事務所を構える日伸海運はその筆頭。

 中国造船にいち早くバルカーを発注、今回、韓国サムスン重工業に17万立方メートル型の新造LNG船1隻を発注した。

 日伸海運以外にも最近、LNG船保有を決めた日本船主はいる。

 しかし、その船主の案件は、海運大手が用船者、配船先も海外ユーティリティー(電力事業者)とスキームはプロジェクト・ファイナンス並みの堅固な立て付けを持つ。

 今回、日伸海運が発注した新造LNG船は現時点で配船先未定。竣工は2022年。LNG船市況の予測は需給バランスからほぼ割り出すことが可能で、22年はLNG船市況の好況期の最終段階に間に合う。

 メガバンク関係者が話す。

 「日本船主の変化についていけるファイナンサー(銀行)がどれだけいるか。四国、中国、九州の地銀は金融庁の審査基準の強化で収益力の高い船舶融資に舵を切らざるを得ない。メガバンクでもリスク判断が難しいとされるLNG船への融資を単独で行う地銀も出てきている」(船舶融資担当者)

 BBCの嵐が収束に向かいつつある今、今度は船主の「オーバー200ミリオン案件」(1隻の投資額が200億円を超える融資)が増加しつつある。

 協調融資を組まず、勝負に出る地銀は今後、どこまで「オーバー200ミリオン案件」に対応できるのか。船主の変革は地銀の融資判断にも大きな決断を迫っている。

 (国内船主取材班)

 =毎週月曜掲載