2019大型連休臨時ゲートオープン
2019 事業者要覧 スーパーバナー
 印刷 2019年04月01日デイリー版1面

MariTech 海事未来図 インタビュー】三井E&S造船企画管理本部事業開発部長兼自律操船システム事業推進室長・平山明仁氏:自律操船事業強化/21年にシステム販売

三井E&S造船・企画管理本部事業開発部長兼自律操船システム事業推進室長・平山明仁氏
三井E&S造船・企画管理本部事業開発部長兼自律操船システム事業推進室長・平山明仁氏

 三井E&Sホールディングス傘下の三井E&S造船は、自律操船システムの開発を促進させる。今年に入り、艦船・特機設計部、事業開発部、子会社の三井造船昭島研究所の3部署に分かれていた自律操船システム関連の機能・中核人員を、自律操船システム事業推進室に集約した。同室長を務める平山明仁・企画管理本部事業開発部長に、今後の取り組みについて聞いた。(聞き手 五味宜範)

 --自動運航船に関して、自律、無人化など言い方が混在している。

 「自動化と自律化に関しては、自動化は、単に人間が関与せずシステムが自力で動作するようにすることを指す。一方、自律化は、自力で動作することまでは同じだが、ある基準や規則にのっとってどう動作させるか判断するという部分が付け加わる。つまり、自律化は、自動化の一種となる」

 「無人化船は、完全自動化船と完全遠隔操縦船に分かれる。完全遠隔操縦船は、陸上の操船者が遠隔から操船するもので、船上と同等の情報把握機能が必須、情報収集能力不足を補うために自律化技術も必要となる。完全自動化船は、船上システムで運航する。乗組員と同等の評価・判断機能が必須、緊急時対応のための遠隔操作技術も補完的に求められる。完全遠隔操作は衛星通信に依存するほか、今の法律や規則では実現が不可能。部分的な自動化・自律化の方が先に実現すると考える」

■長い歴史生かす

 --日本は自動運航に関する取り組みの歴史が長い。

 「当社は1961年、船橋から主機を直接操縦し、機関部の監視や制御を機関室下段のコントロール・ルームで集中的に行う世界初の大型自動化船(貨物船)『金華山丸』を設計・建造した。国のプロジェクトなどでは、『船舶の高度集中制御方式の研究開発』『高信頼度知能化船の研究開発』などに参画した。これらで蓄えられた技術が、現在の船舶自動化に寄与する製品の基礎となっている」

 「足元では、国などが進めるプロジェクトとして『自律型海上輸送システムの技術コンセプト開発』『船舶の自動離着桟の安全性にかかる実証事業プロジェクト(自動離着桟実証プロジェクト)』などに参加している」

■大型船で実験へ

 --自動運航に関する具体的プロジェクトは欧州の動きが目立つ。

 「複数のプロジェクトが離合集散しながら進行している。比較的大きな船を対象としたプロジェクトで、表に出てきているのはノルウェー舶用メーカーのコングスベルグ、欧州肥料大手ヤラなどが進めるプロジェクトの小型コンテナ船ぐらいしかない。全長は79・5メートルにとどまる。特別な仕様の船を、特別な海域で自動運航させるプロジェクトだ。当社や三井造船昭島研究所のほか、商船三井、東京海洋大学が参画する国土交通省の自動離着桟実証プロジェクトでは、2019-20年に全長190メートルの大型旅客フェリーでシステムを搭載し実証試験する。この成果は、国や船級での自動運航船の安全性検討などにも生かされる。また、成果は製品にも取り入れるが、製品は競合造船所なども含め提供することを予定している」

■協調操船めざす

 --三井E&S造船独自では現在何に取り組んでいるのか。

 「当社では、指令した通りに自動操船できる統合操船システムMMSを80年代から販売し、官公庁船向けに約100システムを受注している。あらかじめ決めたポイントを自動的に通過しながら航行できるオート・トラッキング、潮流・風・波浪の影響下でも自動的に定点を保持するダイナミック・ポジショニング、潮流・風・波浪の影響下でも船首方位を保持できるオート・ヘディング、ジョイスティックの操作ですべての方向に移動可能なジョイスティック・コントロールなどの各モードを備える。このほか約4年前から、航行中の船舶の状態を把握可能なモニタリングシステム『フリート・モニタ』を販売しており、これまでに約330システムを成約した。このモニタリングシステムを使って自律システムの健全性を確認する」

 「今後は、MMS、フリート・モニタに、自律ユニットとして自律制御モジュールとHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を加えた自律操船システムの販売を目指す。自律制御モジュールは、人の判断を補って航路計画策定などを行う。HMIは、システムが把握した航行状況や作成した航路計画を人間と共有し、システムが把握できない情報を人間がシステムに伝える役割を果たし、人とシステムの協調操船を実現する」

■順次レベル向上

 --自律操船システムの販売はいつになるのか。

 「21年のリリースを目指す。自動航路計画、自動見張り、自動避航、自動離着桟、自動係船監視についての自律化機能の開発を行っている。リリースする製品の自律化のレベルは開発の進捗(しんちょく)を考慮して決定するが、21年に何らかの自律機能を搭載した製品開発の完了を見込む。製品リリース後も順次レベルアップする予定としている。また、制御アルゴリズムや他の機器類との連接検証用シミュレーターの整備を進めている」

 ひらやま・あきひと 88(昭和63)年三井造船(現三井E&Sホールディングス)入社。08年九大院工学府で博士号取得、12年技術開発本部技術総括部主管、14年三井造船昭島研究所取締役を経て、今年1月から現職。福岡県出身、53歳。